活字はこう読む? 雑・誌・洪・積・世

サブ・カルチャー好きの情報スクラップ。ささらほうさらと彼岸を往復。

 映画(さ・た行)

100人に1人はサイコパス!?/『チェンジリング』5

チェンジリング・1

















●チェンジリング Changeling
●監督;クリント・イーストウッド
●脚本;J・マイケル・ストラジンスキー
●音楽;クリント・イーストウッド/ ミナミ・カトウ
●出演;アンジェリーナ・ジョリー/ ジョン・マルコヴィッチ
●DATA;アメリカ合衆国 2008年5月20日公開 142分

 春間近、今日は冷たい雨が降っている。この雨は夜半には雪に変わるそうだ。夜明けを前にした空は一層暗く、春の直前は深々と寒い。これは暗さの底から光を求め、不撓不屈、権力と闘う女性の物語。深夜WOWOWにて視聴。実際の事件を元に映画化されたそうだ。真実の重さに圧倒される。簡単なあらすじと感想など。

●あらすじ

 1928年、ロサンゼルス郊外。クリスティンは、電話交換手として働くシングル・マザー。9歳の息子のウォルターと二人、平穏に暮らしていた。クリスティンの勤務中、留守番をしていたウォルターが消える。警察に届けるが、誘拐か?、家出?か判らないまま時間が過ぎ、クリスティンは苦悩の日々を過ごす。辛い日々の心の支えは、長老会教会のグスタヴ・ブリーグ牧師だった。

 失踪から5か月後、警察から「息子が発見された」と連絡があり、クリスティンは喜び駅に向かった。そこにいたのは息子に似た少年…だった。自信満々のジョーンズ警部の談話に、クリスティンはその少年は家に連れ帰ってしまう。少年は記憶喪失だと言い、家の様子も不案内。翌日、「少年は別人」と申し立てるクリスティン。だが、警察は「事件のショックで別人のように見えるのだ。帰還兵にはよくあることだ」と取り合わない。挙句の果てに「母親失格の冷たい女だ」と、クリスティンを罵倒する始末…。

 連れてこられた少年は、ウォルターにはない割礼がほどこされ、身長は9cm低い。前歯の形も違う。歯型は歯科医が確認、小学校の担任教師も「まったくの別人」と法廷証言を約束してくれた。クリスティンの活動は、ジョーンズ警部の知るところになる。警察に間違いがあってはならない。告発直前に警部に呼び出されたクリスティンは、ロス市立の精神病院に極秘入院させられてしまう。事件の相談にのっていた長老会牧師は、告発直前に失踪したクリスティンに不安を感じていた。協力者とともに安否確認に警察に行くが…。

 精神病院には“コード12”と呼ばれる患者が多数いた。病院の食堂、元売春婦だった女性がクリスティンに話かけてくる。彼女も“コード12”、警官に暴行され、不法監禁されたのだ。反抗的な態度では事態が悪化する。ここの対処法を教えてもらい、にこやかに対応するクリスティン。だが、医師が差し出した退院の条件は、警察捜査同意書だった。サインを拒んだクリスティン。医師は、看護婦に電気ショック処置を命じる。電気コードを頭に装着され…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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チェンジリング・P


 1928年といえば昭和3年だ。

 80年前のアメリカは文化的!!。電化製品を除けば、日本の昭和40年ぐらいに思える。街は平和で、穏やか、瀟洒なインテリアの家、仕立ての良いスーツに上品なドレス…。だが、物語が進むにつれ、大きな権力に隠された悪魔的な行為と、本当に悪魔のような所業が明らかになる。

 前述したように、本作『チェンジリング』は、1920年代、実際にロサンゼルスで起きたゴードン・ノースコット事件【ゴードン・ノースコット事件(Gordon Northcott);アメリカ合衆国で1920年代後半に発生した連続少年誘拐殺人事。別名をワインヴィル(現在のミラ・ロマ)養鶏場連続殺人事件"Wineville Chicken Coop Murders"と呼ばれる。裁判で有罪になったのは3人の殺害であるが、本人の告白では、犠牲者は映画に登場するウォルター・コリンズなど20人としている。(ウィッキペディアから引用)】を元に作られた物語。

 映画には描かれていないが、このシリアル・キラーには、実の母親と言う共犯者がいること。犠牲になった少年たちは性的虐待を受けていたこと、遺体は消石灰で処理し、砂漠に埋めたため殺害を法廷で立証できたのはたった3人であることなど記録されている。身の毛がよだつというのは、このような事件を言うのだ!!。

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 題名の『Changeling』は、若い娘や美しい子供、特に金髪の子供がトロールや妖精の子と交換されると言うヨーロッパの古い伝承。日本ドラマによく登場する取替え子は、赤ちゃんの時に産院で交換される話が多い。生まれたばかりの赤ちゃんならいざ知らず、9歳の子供が別人に替わるのは相当に無理な話だ。だが、それが実話なのだから、いくら80年前でも????。「この子は別人です」と母親が言っているのに、「あなたの勘違いだ」と強弁される。自分の子もわからないのは精神異常だと人権無視の精神病院に監禁される!!!。本当に怖い…。

 映画はゴードン・ノースコット事件の全容を明らかにするとともに、犠牲者でありながら、さらに過酷な経験をすることになったクリスティン・コリンズの異常体験を中心に進行する。とにかく、闘うお母さんは毅然としている。冷静・沈着!、時には冷たく見えることもある。精神病院での、彼女の強さ、理性は超人的だ。その強い母親役は、アンジェリーナ・ジョリー。彼女の意志の強い顎の線、強い光を宿した瞳は、役の個性を能弁に語っている。

 ジョーンズ警部の保身と不正、精神病院の患者への虐待、裁判経過、犯人の死刑執行と、事件は時系列で丹念に描かれている。一番の不思議は、「自分はウォルターだ」と言い張った家出少年!?!?や、「僕は子供だから罪にならない」と叫ぶ共犯の少年。ここはもう少しシーンの追加があっても良かったかもしれない。

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 アメリカ合衆国は広い…。

 さまざまな理由で人が居なくなる。離婚の親権問題や破産、犯罪被害者などなど、未成年の失踪は多い。手がかりを求め、牛乳の紙パックに個人写真など印刷されているのを見たことがある。その失踪者の0・数%は、無差別連続殺人の犠牲になっているかもしれない。怖い統計だが、男性で100人に1人、女性で300人に1人が、サイコパス(反社会性人格障害)である可能性があるそうだ。

 犯人のゴードン・ノースコットは快活な青年風に演じられる。身なりも整え、とても極悪な殺人鬼に見えない。彼は、20人以上殺している。それでも、地獄を怖れ、天国に行こうとしている。自己都合、被害者の痛みに共感できない心…。これがサイコパスの典型なのだろう…か。映画も怖いが、実際の事件の方が数倍も陰惨だ。


 本作には程度の違いはあるにせよ何人ものサイコパスが登場する。人は怖い。国家権力を自分自身の力と勘違いした者。欲望を抑えることの出来ない者。嘘をつくことに罪悪感のない者…。身を守るすべは、良き隣人なのだろうか…。

 本当の恐怖を映像から感じることは少ない。
 だが、本作はリアルな恐怖が迫ってくる。
 牧師役のジョン・マルコビッチの存在感は特筆!。

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チェンジリング・2

食を通じて学ぶ日韓歴史/『食客』映画版5

食客映画1

















心を動かす味
味を感じるのは
舌でなく心である


●食客●
●原作;ホ・ヨンマン
●監督;チョン・ユンス
●出演;キム・ガンウ/イム・ウォニ/イ・ハナ
●DATA;韓国封切り2007年 DVD発売日2009年11/13 115 分

 今年最初のレンタルDVD。暮れにTVドラマ版の『食客』を観た。明るいソンチャンの生き方、演じているキム・レウォンさんの笑顔!、悪人の登場しないドラマに、すっかり『食客』ファンに!!。年明け、TUTAYAの棚を探したら映画版の『食客』も入荷していた。あらら、TVとは随分違う…。。。さて、あらすじと感想など。

●あらすじ

 5年前。“待令熟手”の店として高名な“雲巌亭”では、後継者選びが行われていた。候補の一人は、総料理長の孫オ・ボンジュ。対決する若者は“待令熟手”の高弟を祖父に持つソン・チャンだった。勝負の食材は、最高級のメフグ。皿の模様が透けるほどに薄造りにしたホンジュ。ソン・チャンは薄く削いだフグの身で見事な鳳凰を描いた。二人の腕前に招かれた美食家たちは、感嘆の声を上げる。ソン・チャンの皿の試食。「後味が違う。」「刃物の上に立っているような…」。同時に皆、苦しみもがきだした。大騒ぎの中、一人呆然とするソン・チャン…。毒の処理は完璧だったはず…。納得できないままソン・チャンは店を去り、オ・ボンジュが店の後継者となった。
食客映画P
 中年の日本人男性が大勢の報道陣の囲まれていた。彼の前には、大きく刃の欠けた古い包丁があった。この包丁は、最後の“待令熟手”が自らの手を切断したもの…。彼は、日本人の宴席用の料理を作るのを嫌い、右手を切断。数日後、弟子に看取られながら服毒したのだ。宴会の料理はもう一人の弟子が造った。それが“雲巌亭”の始まりだった。王不在の大韓帝国は戦火の中に沈んでいった。日韓併合の悲しい歴史だ。

 日本人藤原は、当時の政府高官の子孫だった。父から最後の“待令熟手”の悲劇を聞き、彼の包丁を、正統な持ち主に返すことで、なんとか「罪の償いをしたい」と来韓したのだった。その“待令熟手”を探す方法として、藤原が提案したのは文化庁共催の大規模な料理コンテストだった。

 その頃、雑誌記者のジンスは花札賭博容疑で留置所にいた。迎えに来た編集長はジンスを車に乗せる。ジンスと来た場所は、田舎の農家。古い家には、呆けたお爺さんと人なつこい牛がいた。トラックで戻ってきたソン・チャンに、編集長は食事を頼む。だが、編集長の真の狙いは、料理の天才ソン・チャンを料理界に引き戻すことだった。行商しながら自由に生きる生活に幸せを感じていているソン・チャン。彼はコンテストに参加する意志はない。ソン・チャンのトラック行商は大人気、いつも奥さんたちに囲まれていた。行商中、ソン・チャンは、“雲巌亭”の同僚に出会う。彼もホンジュの横暴に嫌気が差し“雲巌亭”を辞めていた。今は焼肉店の婿になっていた。懐かしく談笑する二人の姿を、こそこそ盗み見する男がいた。彼は“雲巌亭”の従業員だった。

 15年前、11歳のソン・チャンはオ総料理長に“雲巌亭”に連れてこられた。庭では、たくさんの調理人がキムチの下ごしらえをしていた。子供ながらソン・チャンは見事な包丁さばきを見せる。ソン・チャンの夢は、「一番の料理人になること」だった。

 焼肉店で会った男はソン・チャンを“雲巌亭”に連れていく。そのには卑怯にもソン・チャンの河豚に毒を塗ったオ・ホンジュがいた。彼はソン・チャンの料理の腕を恐れ、懐柔しようとしていたのだ。ホンジュの傲慢な態度に、ソン・チャンは再び包丁を握る決心をする。いよいよ国中の料理人が腕を競うコンクールの日…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!

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 1970年代、香港映画が日本で一般上映始めた頃。たとえば、ブルース・リー主演の『怒りの鉄拳』では、上海租界での悪い!悪い!日本人が描かれた。当時のアジア映画は、日本マーケットを想定していない。日本人は悪役の定番だった。豊臣秀吉の大侵略、明治初期から始まる内政干渉・朝鮮派兵・侵略は1945年夏まで続く。この日本のアジア侵略は、極悪・悲惨極めたものだった。今も中国や朝鮮半島の人は反日感情を持ち、苦い怨嗟の歴史、心に深い恨みと傷を残している。

 本作『食客』は、日本のバイヤーが購入する際、日本人関連部分をカットするように依頼した。しかし、監督はそれを潔しとしなかった。「だったら、売らない!!」。この監督の気骨があったからこそ、ノー・カット版を見ることが出来た。実際、日本人に関して、誇張した悪人として描かれてはいない。きちんと節度ある描写で、軍人の姿を描いていた。この軍人の子孫が、自らの過ちの歴史を詫びるために訪韓する導入も、私は監督の日本に対する「赦しの心」を感じ、「ありがたい」と頭の垂れる思いだ。

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食客映画3 この物語の発端は、最後の朝鮮国王純宗が国が滅亡することを嘆き、断食したことから始まる。最後の“待令熟手”は、国王に別れのスープを作る。この最後のスープが、対決最後の料理になる。この伏線の張り方が実に巧い!!。ソン・チャンのお祖父さんは最後の“待令熟手”の死を看取った高弟。師匠を死なせてしまった罪の呵責から、心を病んでいる。病んだ心で、ソン・チャンに料理の奥義を伝授しようする。TV版では、この設定が日本のマーケット販売に不利とされたのか?、ソン・チャンのお祖父さんは登場しない。また“待令熟手”の死の真相も曖昧だった。今回の映画『食客』で、胸の中でモヤモヤしていた“待令熟手”の死の真相と、“雲巌亭”の立場が判明し、スッキリ!!した。

 また、TV版でコンテストのために、可愛い牛を殺してしまうエピソード。ソン・チャンが買うのは、心臓病の少年が、妹のように可愛がっていた牛のハナちゃん。少年が花の首輪を別れに作ったり、屠殺されるのを知っていながら、「耳の後ろをなぜると喜ぶから、水浴びも大好き、本当に可愛がって欲しい」と懇願するシーンがあった。泣けて、泣けて…、困った。若干、進行が不自然で、ソンチャンのキャラ設定との不一致を感じた回だった。

 今回、コンクールで殺されてしまう牛は、ソン・チャンが家族同然に可愛がっていた牛。このシチュエーションも痛いが、ソン・チャンは自分の人生のために家族同様の牛を犠牲にすることで、勝負への強い意志を感じさせる必然性があった。

 王が最後に飲んだという牛のスープのくだりでは、

「牛を大切に飼育し、農耕、運搬の労働力と働き、死んでからは、体のすべてを食肉として、人に奉仕する牛。牛こそ、朝鮮の精神・国民の宝」

という説明を聞くと、食肉文化の日が浅い日本との文化の相違を強く感じた。牛が眉間に穴をあけられ死ぬシーンで泣く自分…。感傷的な偽動物愛護精神に、強烈な打撃がある。※小3の頃、ペットで可愛がっていたウサギを家人が肉屋に売った思い出がある。やたら泣けるのは、そのトラウマかも…。

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 料理コンテストの進行に沿って、TV版とは違うエピソードが重ねられる。TV版のソンチャンは明るく闊達な長所と、少し乱暴であわて者系、加えて頑迷未熟な欠点もあった。映画版のソン・チャンは無口で職人肌、無欲な人物として描かれる。同じ原作でも、これほど印象の違うドラマになるのか!!、この違いも『食客』の愉しみの1つだ。朝鮮文化らしい華やかな原色を控え、陰影深い画面の色調は物語の根底にある悲劇性に似合っていた。それにしても、韓国料理の奥深い味わい、文化的背景の素晴らしさ!。本物を食べることは出来ないが、画面を通して知ることの喜び!。映画が偉大な文化交流だと、本作を観てつくづく思い知る。

 こっちのオ・ホンジュは少し痛い!!。最後は惨めで泣けますヨ。

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これって破門級?仏法僧を大切に!!。/『達磨よ,ソウルに行こう!』5

達磨ソウル2
















●達磨よ,ソウルに行こう●
●監督;ユク・サンヒョ
●脚本;チェ・ソクファン/ユク・サンヒョ
●出演;シン・ヒョンジュン/チョン・ジニョン/イ・ウォンジョン/イ・ムンシク/
    ヤン・ジヌ/ユ・ヘジン/イ・ヒョンチョル/キム・ソクファン 他
●DATA;韓国 2004年7月9日 101分

 前作『達磨よ、遊ぼう』が面白くて、こっちも観ようと思っていて忘れた(笑)。意外とクリスマス映画なのだ(何故に封切りが7月??)。さて、あらすじなど…。

達磨ソウルポスター

●あらすじ

 冬、山奥の禅寺“銀河寺”。禅僧たちが厳しい修行に明け暮れている。リーダー格のチョンミョン和尚は、ソウルに行くと言う。亡くなった高僧ノス様の遺品を、ソウルの無心寺に届けるためだ。薪割りに退屈していたヒョンガク和尚とまたも沈黙修行中のテボン和尚、何かと口実をつけ、一緒にソウルに行くことになる。寺についてみれば、住職は多額の借金を残し失踪。寺のご本尊には差し押さえの赤紙を貼ってある始末。寺はソウルの中心街にあり、地上げにあっていたのだ。

 赤紙だらけの無心寺には、老いた尼僧と小僧さん、若いムジンお和尚が残っていた。老尼僧に遺品を渡すが、中には切れた数珠が…。借金5億ウォンはすでに返済期限が過ぎ、無心寺は取り壊す運命が待っていた。なかなか立ち退かない3人の僧を追い出すために、開発会社の社員が嫌がらせにやってくる。正義感の強いチョンミョン和尚は「3日後には完済する」と大見得を切る。寺を守るための大法要をする僧侶たちだったが、またも開発会社の社員たちが嫌がらせに!?。彼らはもとヤクザ、今は足を洗って社会復帰に一生懸命なのだった。

 お布施集めの最中、お賽銭箱を持ち去るもとヤクザ…。禅僧 VS もとヤクザ、さて無心寺を守れるのか?。>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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 『風の国』を観ていて、ユリ王の顔が妙に見覚えがあった(?)。『食客』を観ていて、ダルピョン料理人の顔も見覚えが…。あらら、彼らは本作のお坊さんたち!!だった。それに『風の絵師』のパク・シニャンも、前作から出ている。前作ではやくざの兄貴役をしていたのが、今回はベンチャーな屋台のオーナー(?)。スーツ姿のパク・シニョンさんは正統派の二枚目。だが、役でまったく違う印象になる。本作には、ヨンさまのようなメジャーな二枚目は出演していないが、韓国芸能界には味のある男優さんが本当に多い。

 内容は前作を踏襲している。『禅僧 VS ヤクザ』、一種の異文化交流映画だ。どちらも一生懸命、何か悪いと言うことはない。一番悪いのは、借金を残し逃げた住職。開発会社の社員は、利益を出そうと懸命に働いているだけ。法的に守られるはヤクザ側、世間知らずの禅僧たちに勝ち目はない。だが、そこがコメディ、遊んでいるような対決で笑いを誘う。馬鹿馬鹿しいけれど、定石どおり楽しい。

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 さて、脱線。

 韓国のドラマや映画を観ていると、よくお葬式のシーンがある。銅鑼を叩き、赤い面を被った異形の男、旗を立て、綺麗に飾った神輿のような棺を囲んだ葬列が行く。日本も戦前の土葬の頃はこんな葬列があったらしい。だが、今は目にする機会がない。韓国のお葬式では、仏教は関係ないのか???。日本のように和尚さんが読経するシーンがないので、お葬式の全容が判らない。日本のお寺はお葬式産業の一端を担い、信仰に関わらず墓地販売と管理も生業だ。よほどのことがない限り、地上げはないように思うし、そもそもお寺は檀家さんのものなので、和尚さんの勝手には出来ない(大抵の場合)。

 映画の中だが、無心寺には墓地はないし、銀河寺にも墓地はない。こんな近くて遠い国の文化を知るのも映画の愉しみの1つだ。理屈でどうこうと言う映画ではない。純粋に楽しむのが正解の映画。無心寺の若い僧が美男(笑)。多少、下品な部分もあるので、その点だけは笑って許そう!!(笑)。

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達磨ソウル1

美味しいの秘訣は、愛情・真心にあり!!。/『食客』TV版5

食客3


















●食客(しょくきゃく)
●原作;ホ・ヨンマン
●演出:チェ・ジョンス
●脚本:パク・ポムス
●出演:キム・レウォン/ナム・サンミ/クォン・オジュン/ウォン・ギジュン
●DATA;TVドラマ 韓国 全24話 初回放映日2008年6月17日

 慢性金欠病のわたし、それが新作価格で連続レンタル、1週間で観了(大汗)。ドラマを観て、家でクッパ系を作ったり、キムチを食べたり(笑)。買ってきたキムチをソンチャンキムチと呼んだりしている(汗)。原作は韓国で大人気のコミックだそうだ。コミックのネット価格で調べたら20巻に33600円!?の価格が付いていた(ビックリ!!)。簡単なあらすじと感想など…。

●あらすじ

 日韓併合下の朝鮮宮廷。軍部の圧力の強まる中、王家は縮小していた。高宗王は宮廷料理人“待令熟手”に、最後の王家伝統料理を所望する。日本軍の支配下、もう“待令熟手”のいる場所はなかったのだ。別れの前、王は“待令熟手”と記念写真を撮った。それから90年余の歳月が流れる。

 雲岩亭は広大な敷地、宮殿のような建物は威容を誇っていた。内部には豪華な個室、王が食事した部屋も再現されていた。雲岩亭は韓国政府の接待料理や、大使館主催パーティのデリバリーなど、韓国を代表する料亭だった。その格式には、謂れがある。雲岩亭のオ・ソングン総料理長は、代々王に仕えた宮廷儀式料理人“待令熟手”の末裔とされていた。オ総料理長には、二人の息子がいた。長男のホンジュは、何をさせてもそつのない優等生タイプ。高齢の父の代わりに、経営も含め、料理長として雲岩亭を仕切っていた。

 弟のソンチャンは、快活で屈託のない人気者。だが、短気で早合点する欠点もあった。またソンチャンはソングンの実子ではなく、11歳の時この家に引き取られた養子でもあった。ソングンは実子のホンジュ以上に、ソンチャンを慈しみ、料理を教えていた。いつのまにかソンチャンの料理センスは、皆一目置くようになっていた。そんなソンチャンを、苦々しく見る副料理長のミヌ。彼は野心家で、いつか雲岩亭を支配したいと思っているようだ…。

 オ総料理長は、ソンチャンを正式な料理人の一人に加え、伝統の包丁を贈った。その様子を見たミヌは面白くない。翌日、日本大使館のパーティに出張した時、ソンチャンの落とした包丁を木の茂みに蹴り込んでしまう。せっかく実力を認められたのに、包丁を失くしたソンチャン…。そんな彼を、オ総料理長は温かく見守っていた。健康不安のあるオ総料理長は、次の雲岩亭の後継者を「“創作料理勝負”で選ぶ」と発表する。長男のボンジュは、勝負と聞き、胸中穏やかではなかった。野心家のミヌも、この勝負に参戦を表明。深い考えのないソンチャンも、思わず手を挙げてしまった。このことが、雲岩亭に暗雲をもたらすとは…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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食客1


















 前述したが、韓国の人気コミックが原作。だから細かい人物履歴が、既知のものとして割愛されている。たとえば、ソンチャンとミヌの関係。二人はいつも揉めているが、なんと高校の同級生らしい。ミヌには、ソンチャンはすぐに手が出るが、兄ホンジュの暴言には徹底的に耐える。そんなソンチャンの背景は、アメリカに留学しながら中退して帰国。雲岩亭に戻って料理修行するまでは、ちゃらんぽらんなお坊ちゃん!?だった。長男ボンジュがソンチャンを軽んじ素直でないのも、過去(?)のソンチャンの素行の悪さが所以らしい。こう言った設定を知らなくても。『食客』は十二分に面白い。

 また、このドラマのために作られた“雲岩亭”のセットにビックリ!!。江原道旌善江原ランドにあるそうで、撮影後は実際のレストランとして開業する予定で作られている。厨房の広さも十分にあり、器具や、水場、冷蔵庫の配置などなど、実にリアル。(※日本のドラマの厨房は嘘っぽいことが多い。)ソンチャン役のキム・レウォンさんは三ヶ月調理学校に通ったそうで、調理の手際も良い!!。低予算ドラマでは、ロケが最小限になったりするが、『食客』はふんだんに地方ロケが織り込まれる。食材ごとに産地が紹介され、活気有る港や豊かな自然が画面を彩る。その風景や趣が、なんとも懐かしく美しい。集落の様子は昭和の日本に似ており、日本で失われてしまった手仕事・農村の様子、村落のしきたり、そんな韓国庶民文化を知るのも楽しい。

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 勿論、伝統宮廷料理も、このドラマの見所。雲岩亭の裏にならぶ、調味料の壷!!。味噌、しょうゆ、キムチ、すべて店の自家製の設定。壷置き場は5年ものの塩と赤土、山砂、炭を十二層に重ねた特殊な床で、排水設備もある。普通の屋外と思って見ていたので、これもビックリ!!。こじんまりした日本の料亭では有り得ない風景だ。チャングムやホ・ジュンで知った浅薄な知識だが、調理・煎じ薬に使う水の種類は、産地・時刻・季節で、数限りなく分類され、「それぞれ薬効、味が変わる」とする。今の日本では、田舎は水道水で調理する人がほとんど、こだわった人でも地下水、湧き水、ペットボトルの水…、ぐらいのこだわりしかないのではなかろうか…。韓国(朝鮮王朝)の食文化の深さは、一筋縄にはいかない。

 韓国の宮廷料理は、料理自体が重要文化財として保護されているそうだ。常々思うのだが、日本の格式の高い神社の神饌(しんせん)は、朝鮮王朝宮廷調理の盛り付けに似ている。ベトナムやタイなどのお供えもやはり似ている。神へのお供えものを通して、アジアの食文化の根っこが同じだと感じたりする。

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 最初は『美味しんぼ』みたいなドラマかと思っていた。

 この『食客』では、料理がドラマの主役でもある。ドラマの中で、さまざまな料理が登場する。素晴らしい伝統宮廷料理に加え、『食客』の調理は現代的にアレンジされたものも多く登場した。日本風の刺身や寿司なども登場した。それが、実は物語の伏線になっているのだが…。韓国と言えば焼肉!、食肉牛の文化、焼肉文化の紹介が、物語中盤の山になる。泣けてしかたなかったのだが、可愛い牛を村で買い、食肉にして食べるシーンがある。その茶色の牛の可愛いこと…(涙)。日本のドラマでは奇麗事で、肉が可愛い牛だったことは割愛される。解体シーンも、正直に描いている。牛に名前をつけ、妹と呼び可愛がっていた少年。彼の手術代のためにハナちゃんは殺される(号泣)。名前、つけちゃうのは…、、、情が、、、あ〜〜〜肉が食べられなくなりそうだ(汗)。

 だが、メインテーマ“料理対決”ではなく“親子愛”だった。視聴率競争に邁進する日本のドラマで、真正面から親子の愛情をテーマに据えるだろうか?。その意味で『食客』は、すごく新鮮だった。『食客』は、さまざまな親子の物語を重ねていく。「包丁職人の親子」「解体職人の父娘」「おばあさんと嫁さん」などなど、貧しさや誤解から、悲しみに囚われた親子、そんな頑な心にソンチャンは出会う。ソンチャンはおせっかいだし、困った人をほっとけない。どんどん、他人の家庭の事情に介入していく。そして、心に残る美味しい料理を作り、親子を和解されていく

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 少し昔の韓国ドラマといえば、“恨”の心がいつも物語の底にあった。

 このドラマで言えば、日本が韓国を侵略した結果、王家が絶えたこと、伝統が揺らいだことが“恨”になるだろう。“恨”は漢字だけ読めば、“うらむ”と思いがちだが、その意味は、“民族の悲しみ”、悲しい心が「化石のように心の深層に残る」ことなんだそうだ。島国日本と違い、朝鮮民族は、他国の侵略や内乱、身分制度など、深い悲しみの歴史を重ねている。現在、時代は大きく変わっている。韓国は大きな経済的な発展を遂げ、その悲しみに囚われることがなくなってきた。ドラマは大きく様変わりし、明るいコメディや、日本の歴史ともリンクした壮大な歴史劇がどんどん作られている。“恨”を“赦”や“恵”に昇華する時代になっているのだろう。

 本作でも一応、日本人や日本の存在は悪役風に描かれる。しかし、ちゃんと尊敬の念、良きライバルとしての日本人が描かれる。ホンジュが経営のために父オ総料理長の伝統を捨てようとした時、それを、結果的にすくったのは日本人だった。彼は、オ総料理長の弟子。誰よりも貪欲に味を追求する男として描かれる。演じた俳優さんは在日韓国人3世だそうだ。元は同じ遺伝子を分け合った東アジアの同胞だ。これからの日韓の関係が協力発展していく予感があり、好ましい設定でもあった。

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 続編も作られているらしい。

 感想に書かなかったが、ソンチャンとジンスの恋愛の成り行きも見所。『朱蒙』でヨンポ王子をしていたウォン・キジュンさんがまた憎まれ役(汗)。もっと良い人役の彼も見たい。今年観た韓国ドラマの中では、出色!!。

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食客2

ローマ観光!と猟奇連続殺人!?/『天使と悪魔』5

天使と悪魔/2

















●天使と悪魔●
●原題:Angels & Demons
●原作・製作総指揮:ダン・ブラウン
●監督:ロン・ハワード
●出演:トム・ハンクス/ユアン・マクレガー/アイェレット・ゾラー/
    ステラン・スカルスガルド/ピアフランセスコ・ファビーノ/
ニコライ・リー・カース/アーミン・ミューラー=スタール 他
●DATA;公開 2009年5月15日 138分 アメリカ合衆国 制作費1.5億ドル

 今年5月公開だった作品。DVDの発売を待って鑑賞。秘密結社とバチカンの陰謀、反物質!?!?!?。学研の“ムー”の世界だったりする(笑)。前作の『ダヴィンチ・コード』もそうだったが、自分の読書フィールドと重なり過ぎていると、なんとなく二の足を踏む。前作映画のラストは意識不明になるテイタラク!?。原作と違うラスト???を確認してない(謎)。徹夜明けで眠くても、映画館では寝ない。よほど退屈だったのだろう…。と、今回は自宅鑑賞なので、寝る可能性大!?。ところが、ところが…。

●あらすじ

 バチカン宮殿の奥深く老齢の教皇が死ぬ。彼が息子のように愛情を注ぎ、教育したカメルレンゴ/教皇の秘書長パトリック・マッケンナは、儀礼どおりに教皇の印“漁夫の指輪”を破壊した。その瞬間、次の教皇決定までパトリック枢機卿が教皇の全権を代行する。世界中の信者が嘆き悲しむ中、厳粛に葬儀が行われた。葬儀から9日間の服喪後、コンクラーヴェ/教皇選挙が行われる。投票権を持つ世界中の枢機卿がバチカン宮殿に向かっていた。

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天使と悪魔ポスター
 同じ頃、セルン/CERN(欧州原子核研究機構)では、反物質の合成に試みていた。この物質の合成は、「(かつてガリレオがそうだったように)神の禁じた科学ではないのか?」と案じる人物がいた。彼はセルンに勤務する司祭レオナルド・ヴェトラだった。彼は反物質の合成の成功と危険性を、逐次教皇に知らせていた。研究員の注視する中、かつてない量の反物質が封じ込まれた。成功に喜ぶ中、事件は起こる。神父が何者かに殺害されたのだ。研究所の厳重なセキュリティは、司祭の眼球によって破られ、反物質のカプレルは何者かに持ち去られてしまった。もし、反物質が他の物質と接すれば、人類は未知の災厄をもうむることになる…。

 この一報は、ただちのバチカンに知らされる。時を同じく、コンクラーヴェに参加する4人の枢機卿が行方不明になる。彼らは、次期教皇候補として人望の厚い枢機卿たちだった。反物質盗難と枢機卿殺害予告…。事件の解決は、紋章と象徴の研究をしているハーバード大学のロバート・ラングドン教授の頭脳に委ねられた。セルンの科学者ヴィットリア・ヴェトラも、ラングトンの捜査に加わる。彼女は、反物質を封じたカプセル取り扱いを熟知していた。

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 事件を知らずに、枢機卿たちは伝統どおりシスティーナ礼拝堂に集められていた。手がかりを求め、カルメレンゴに面会したラングドン教授。彼が閲覧を求め、拒否され続けていたガリレオの初版本。その貴重な古書に事件の手がかりが隠されていた。カメルレンゴの許可を得てた二人は、バチカン文書室に入室したのだった。

 犯人はプロのテロリスト。送られた画像には、誘拐された枢機卿を映されていた。1時間ごとの殺人予告。枢機卿の命は、ラングトンの推理にかかっている。背後に伝説の秘密結社イルミナティがいるのか?。4つのエレメントの焼印…。事件はローマを舞台に広がっていくのだった。犯人の目的は何か?。反物質の行方…>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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 イアン・マクレガー演じるカルメレンゴが最初から怪しい(笑)。教皇が死ぬと重要書類に押印する指輪を壊す。そのシーンがなかなか象徴的。最初からネタバレ!?状態。有名な“聖マラキの予言”によると、現在の教皇ベネディクト6世の次の教皇で、バチカンの歴史は終わるらしい。ってか、2012年と同じノリの終末論の1つ。

 千年紀の終末、20世紀をもって終わる魚座(キリストの象徴)の時代と、聖マラキの予言はほぼ一致する。教皇もバチカンもカソリックも、まだまだ終わるとは思えないが、女司祭の登場や、新しいキリスト教が生まれる可能性もある。春分点の移った水瓶座の時代、21世紀からの二千年は、変革の時代とされ、霊的進化・科学の時代ともされている。これは本当にそうだと確信する。地球規模の環境変化、太陽活動の不安定、新氷河期の到来!?!?、科学と心の力で乗り越えなければならない課題が、人類には山積みにされている。そのことをつらつら考えると、本作『天使と悪魔』は欧米の不安と本音が潜んだ物語だと思う。

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反物質???

 物質と接し対消滅を起こした時、理論上、莫大なエネルギーに転換する。1gの質量の“反物質”が対消滅する時には、なんと!!約 9×1013(90兆)ジュール のエネルギーが放出されるらしい。ピンとこないが、1ジュールは、地球上でおよそ102グラム(小さなリンゴくらいの重さ)の物体を1メートル持ち上げる時の仕事に相当するそうで、90兆のりんごを1m持ち上げる!?!?、と考えるとなんだか相当に怖いことになる。兆って単位がそもそもピンとこない???。億の万倍?の林檎を90メートル持ち上げる力と=と考えると、そのエネルギーの巨大さが、なんとなくわかった感じもするが、???あはは、、、やっぱり判らないヤ(笑)。実際、2002年にセルン/CERN(欧州原子核研究機構)で日本を含む国際共同研究実験グループが、反水素の大量生成に成功したらしい。ウィッキに5万個とあるが、元素の5万個なんて、どの程度の質量なのか?、あはは、、、やっぱり判らないヤ(アホホホ)。

 物語では容器に閉じ込められた反物質は野球ボールほどもあった。どれほどの破壊力か?。映画の中の爆発程度じゃ済みそうもない…(怖)。巨大なエネルギーを生む研究だが、実用化は本当に先の先、「星間旅行が実現した時、燃料に活用することが出来る」なんてリアルSFの世界。地動説で大騒ぎした中世、反物質で戦々恐々の近未来!?、どっちが怖いか?と言えば、反物質の存在は相当に怖い。

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 映画の感想をまったく書いてない。

 一言で言えば、ハリウッドらしい娯楽作。なんとなく横溝正史、角川映画チックかな(笑)。ラングドン教授はほとんど金田一探偵だ。探すのだが、微妙に手遅れ。目の前でどんどん死んでいく。土に火に風に水、4つのエレメント殺人事件は新鮮味が希薄。世界首都ローマ観光を事件とともに堪能!!。作品に登場する建築は、“サン・ピエトロ大聖堂”・“システィーナ礼拝堂”・“パンテオン”・“サンタ・マリア・デル・ポポロ教会”・“サンタ・マリア・デラ・ヴィットリア教会”・“バルベリーニ広場/トリトーネ”・“ナヴォーナ広場/四大河の噴水” などなど。10年ちょい前、へそくりから豚の貯金箱まで、有り金すべてつぎ込んで、バチカンとローマ観光をした。

死体がごろごろのローマ!、
骸骨山積みのローマ!

 とにかく、官能的!!。それが、遺跡=死の気配と活気が、奇妙なコントラストを醸していた。システィーナ礼拝堂に一般観光客が行く通路傍に、教会関係者だけが利用できるエレベーターがある。一見隠し扉風になっていた。映画のように、バチカンの奥なんて、なかなか見られるもんじゃない。

 ラングトン教授の辿った道を、また観光したくなりました。
 ラスト・シーンはちょっと悲しい…。

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天使と悪魔/1

守るべきは日本の風景!!/『サマーウォーズ』細田守監督作品5

サマーウォーズ



















●サマーウォーズ SUMMER WARS●
●監督:細田守  
●脚本:奥寺佐渡子
●キャラクターデザイン:貞本義行
●キャラクター(アバター)デザイン:岡崎能士/岡崎みな/浜田勝
●OZデザイン:上條安里
●美術監督:武重洋二
●音楽:松本晃彦 ●主題歌:山下達郎
●アニメーション制作:マッドハウス
●声の出演者;神木隆之介/桜庭ななみ/富司純子/斎藤歩 他
●DATA;ワーナー・ブラザーズ 2009年8月1日 115分

 ここ“イオンシネマ高崎”では、連日満席の大盛況!!。8/15は早めに家を出てチケット売り場へ。わわわわ。。。最後の2枚をゲット!。一番前の一番端。スクリーンが遠近法になって見える(汗&笑)。体を沈めて首だけは右に伸ばす。<<気休め(笑)。始まれば視野のすべてが映像!!。一番前も悪くない。

●あらすじ

 OZ(オズ)の世界

 ようこそ!ゲストさん!。

 オズはインターネットの中の都市です。世界中の人たちがオズに住んでいます。自動翻訳機能により、どの国の人とも自由に会話できます。また、オズにはあらゆる種類のショップが存在します。ここでメンバーは自由にショッピングを楽しむことが出来ます。サークル・アトラクションから、ビジネス、公共料金の支払いまで、すべてのインターネットはオズを通して利用可能。セキュリティは万全。オズには守り神“ジョン”と“ヨーコ”がおリ、つねにオズの住民を見守っています。あなたもオズの住民になってみませんか?。アバターの設定は…。

■ ■ 

 夏休みになった都内のとある高校の物理室。さえない部員二人が部室のパソコンにかじりついている。高校2年生の小磯健二は、数学オリンピックの日本代表をあと一歩で逃してしまった。それが悔しくてしかたない。友達の佐久間と二人で、仮想空間オズのメンテナンスのアルバイトに勤しんでいた。そこに憧れの先輩篠原夏希が現れる。どちらか一人に、自分と一緒に信州に行き、親戚の手伝いをして欲しいというもの。健二は佐久間を押しのけ、夏樹先輩の依頼を引き受ける。

 夏樹の大量の荷物を持たされ、信州に向かう新幹線の車中。健二は夏樹に「なんでも自分の言うとおりにしてネ」と言われる。大好きな先輩のこと、健二は気楽に応じたが、詳しい話を聞いてびっくり!!。今回の集まりは夏樹の曾祖母栄の90歳の誕生日のお祝いであること。その席に「フィアンセを連れ帰る」と栄に約束したと言う。夏樹の考えたキャラの設定は東大卒業でアメリカ留学帰りの俊英!?。健二は無理だと思うが、断るタイミングが見つからない。

■ ■

 二人が着いたのは長野県上田市郊外。

 驚くことに、夏樹の本家は、武田信玄ゆかりの小大名、陣内家。陣内家は戦国時代を生き延び、維新後は生糸商で財を成すが、栄の夫が放蕩三昧。今は大きな屋敷が残るだけだった。由緒ある家構えは、ほとんど山城状態。2日後迫った栄の誕生日の準備に、親戚がどんどん本家に集まってくる。夕食の膳を前に、夏樹は栄に健二をフィアンセと紹介する。赤面ししどろもどろの健二…。親戚一同固唾を呑む中、栄は頼りない風貌の健二を、意外にもフィアンセとして認めてしまう。一同!唖然!!。

 罪悪感と居心地の悪さに健二は眠れない。深夜、健二の携帯に2056桁の数列暗号が届く。反射的に解を出し、返信する健二…。それは世界中を巻き込んだ大事件の始まりだった。<<<つづきは劇場でどうぞ!!

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『時をかける少女』で新感覚アニメの未来を呈示してみせた細田守監督の新作。

 冒頭、TVCMのような“オズ”の紹介がされる。村上隆さんがデザインしたような、無機質で可愛いデザインは、既視感がある。“オズ”は空想のものではなイ。現在、同じような仮想空間に、アバターを作り暮らすネット・サービスは存在する。“オズ”は、現状できるネットサービスの理想系のようなものだ。ネット空間でさまざまなアバターが、会話し、ショッピングをし、同じ趣味のもの同士集う。言語、人種、貧富、外見など、あらゆるコンプレックスの要素が除外され、キーボード操作の巧稚と才知だけで“スター”になれる世界…。そこに破壊者が現れる。


サマーウォーズ・2 





















戦うのは長野県上田市の旧家!!。監督細田さんの奥様が上田市のご出身だそうだ。日本に風光明媚な場所はたくさんあるが、上田市は遠景の山と古い町並み、戦国時代の史跡、温泉、林檎畑などなど、とにかく素敵な場所だ。そこを舞台に選んだことのセンスの良さに脱帽する。もし毛利家由来の中国地方や、伊達家由来で東北などに舞台を選んでいたら…。きっと、違う印象になったと思う。

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 夏希の本家、上田の旧家陣内家。郊外の山沿いに建っている。上田近郊の人なら、地番までわかりそうなほど、そこまでの道のりが細部にわたり描きこまれている。家の門構え、家の構造、台所の細部、座敷の様子、納戸や風呂の小物などなど、ジブリなどで活躍していたスタッフが渾身の仕事をしている。台所の様子など、もう無くなった祖母の古い家を思い出し、懐かしくも切ないものがあった。

 細田監督が語っているようにこの上田市や陣内家は『日本の原風景』なのだ。それは残念ながら、どんどん失われている。失われつつあるものが、拡大するものの暴走と戦う。陣内家の戦いっぷりが良い。ここらの感じは実直な県民性を持つ長野県民と離れているのはご愛嬌!?。※判ったようなことを書いているが、一応佐久、小諸、上田、御代田など、近隣の行動範囲なのでご容赦ください。

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 手仕事の粋を集めた陣内家の描写に対比して描かれるのは仮想空間“オズ”の細部だ。

 10億人が暮らす“オズ”。10億のアバターが乱舞する。手仕事アニメでは絶対に出来ないCGアニメは秀逸。あえて平面的な描写になっているが、その薄っぺらい表現が、クールであり、良い意味でライトだ。その薄っぺらさ、腐敗する有機物とは対極にある世界。我々の実生活はどんどん薄っぺらいデータに変換されている。それを便利だと言うのもまたクールでライトであり、薄っぺらい。

 最初はアバターのっとり、なりすましの軽犯罪から始まる。それが、個人データ、セキュリティ破り、国家機密の乗っ取りと拡大していく。作中、すべてが同じホスト・コンピューターに接続していく怖さがリアルに描かれる。誰が管理していくのか?。人工知能は暴走しないのか?。これから実際、“オズ乗っ取り”のような事件が重なりつつ、ネット社会が成熟していくのか?。また、どこかでネットを手放すことで、新しい価値観を再構成していくのか?。各自の選択にかかっている。

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 陣内家の一族がまた良い!。

 明治生まれ、気骨があって美しい女当主。
 孫たちの職業は、自衛官、警察官、消防署勤務に水道局員。
 旧当主の隠し子は、東大卒でアメリカ留学の問題児
 ネットのマーシャルアート・キング
 高校球児に漁師に電気店 などなど

 大所帯の面々は皆、見覚えのあるような自分の親戚状態。旧家、隠し子、生糸商で戦後没落!?!?!?。長野や群馬、養蚕の盛んな地方では、自分の家の歴史と重なる人が、たくさんいそうだ。アニメ的なハチャメチャさと、リアルな日本の家族が混在していて、番外編を期待したいほど楽しい面々だった。

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 描いている内容は深いが、アニメ作品としての楽しさ!、わくわく感!、少しのバカっぽさ!。主人公が弱いのも、楽しい!!。神木隆之介くんの声の演技がすごく良くて、彼の実写で続編あり!?。<<<だったら楽しい!!。

 上田に遊びに行きたい!。夏空に西瓜、野沢菜入りのおやき!。
 とにかく見てくださ〜い!!。アニメファン必見!!の傑作!。

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サマーウォーズ・1

床屋の階下は、美味しいパイの店!?/『スウィニー・トッド』3

悪魔の理髪師/1















●スウィニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師●
●原題;SWEENEY TODD/THE DEMON BARBER OF FLEET STREET
●監督;ティム・バートン
●原作;スティーヴン・ソンドハイム/ヒュー・ウィーラー
●脚本;ジョン・ローガン
●出演;ジョニー・デップ/ヘレナ・ボナム=カーター/アラン・リックマン/
    ティモシー・スポール/サシャ・バロン・コーエン/エドワード・サンダース/
    ジェイミー・キャンベル・バウアー
●DATA;2007年 アメリカ/イギリス 117分

 ヴィクトリアン様式が好きで、その時代の少女小説を映画化したものも大好きだ。『小公女』、『秘密の花園』、バラとレースと温室、紅茶とスコーン、ハチミツの香り…。そんな甘やかな夢のような19世紀イギリスは少女趣味の王道。ティム・バートン監督も隠れ(?)ビクトリアンファンなのは、彼の描く夢の世界を見る納得する。本作『スウィニー・トッド』の世界は、そんなビクトリアンな耽美趣味と天国と地獄ぐらいの差はあるが、よくよく見れば、やっぱり少女趣味の世界が反転され隠れていた。そんな訳で(どんな訳?)、皆さん大好きなジョニー・デップさまの美しい歌声と酸鼻な殺人を御堪能ください。

●あらすじ

 スモッグに曇る暗い街並が見える。港に向かう船上。初老の男と船乗りの若者が歌う。

♪どこにもないロンドン どこにもないロンドン

 初老の男はスウィニー・トッド。無実の罪で投獄された理髪師ベンジャミン・バーカーの仮の姿だった。若い頃、ベンジャミンには美しい妻ルーシーがいた。愛らしい娘ジョアナに恵まれ、夫妻は幸せの絶頂にいた。そんな一家の様子を妬ましく覗き見る男がいた。彼の名は、タービン。無慈悲で好色な判事だった。美しい妻に横恋慕したタービンは、ベンジャミンを逮捕。ベンジャミンは無期懲役を言い渡され、遠い監獄に送られてしまう。残された妻は操を守ろうとしたが、タービンの計略に…。

 15年後、脱獄したベンジャミンは、スウィニー・トッドと名乗りフリード街に戻ったのだった。薄汚れた街並、自分のかつての店は、空家になっていた。階下の大家ミセス・ラベットは、不潔で不味いパイ店“ロンドン一不味いパイ屋”を営んでいた。ミセス・ラベットは、彼の妻は「毒を飲んで死んだ」と告げる。落胆し、希望を失ったベンジャミンは、悪徳判事タービンへの復讐を誓うのだ。

 船乗りの若者アンソニーは、美しく成長したジョアナを見かける。彼女はタービンの家に引き取られ、今は幽閉されていた。ジョアナを助けようとした多くの若者は、タービンの部下の鞭の犠牲になっていた。アンソニーはスウィニー・トッドに協力を求める。だが、スウィニーの心は復讐に占められていた。タービン判事を我が店に招き、喉をかき切ること!。それだけが彼の望みだった。
>>>つづきはDVDでどうぞ!※気弱い方にはお薦めしません(汗)。

*************************

 ミュージカル映画は余り好きではない。唐突に歌われても、困ってしまう。だが、この物語は、ミュージカル以外に描きようがない。R-15指定は当然!、ま〜、悪趣味で胸の悪くなるシーンの連続!!な訳で…。そこにティム・バートン監督のユーモアと真骨頂があるんだけどネ〜、っと(汗)。

 19世紀のロンドン…。偉大な女王ヴィクトリアの統治下、イギリスは大英帝国として、大きく繁栄していく。植民地政策で、世界中の富が英国に集まる。支配者階級、富裕な実業者層は、その繁栄を享受し、あらゆる文化、建築、ファッション、芸術は多様に発展し、洗練されていく。

 繊細な陶磁器や、見事な調度、美しい衣装に豪奢な宝飾品etc.今見ても、うっとりする。芸術品の数々が沼の上に咲く美しい花なら、沼の底には貧困と重労働、病気に苦しみ庶民がいた。娼婦の連続殺人事件“切り裂きジャック”も19世紀の出来事だ。

 その前提で『スウィニー・トッド』を見ると、如何に19世紀の英国が格差社会であったことか!!、底辺の貧困層の人々が虐げられていたか、空恐ろしいものがある。

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 物語は単純そのもの。復讐者は、上流階級の男性すべてに憎悪を向け、殺人を繰り返す。復讐を遂げたあと、すべての真実が明らかになり、因果応報の結末を迎える。共犯者は、死体の有効活用を思い付き、理髪店は家畜の屠殺場のようになっていく。この描写が、淡々としながら、凄惨…。ダークな色調で画面をローキィーに押さえているが、この暗い画面でなければ、とても見ていられるものではない。

 本作の原案は、古い都市伝説(初出/ザ・テリフィック・レジスター;1825)らしい。そう云えば、「香港の試着室から消えた女性」とか、「猫肉で作った○ンバーガー」「大ネズミの油で作った○ーガリン」etc.と、似ている。実際にこの悪魔の理髪師事件があったか?と云うと、諸説あり真偽は謎だ。一説には、「トッドは逃げ延びた」と云うものもある。それほど、ロンドンでは、何が起っても不思議ではなかった?と云うことなのか…。しかし、理髪店で、あの鋭利はカミソリを喉近くに当てられたら、誰でも怖い感じはあるヨネ〜。。。

■■■

 怖い!怖い!描写が続く物語だが、中には泣けるシーン、美しいシーンもあり、その時だけホッとする。一番悪いのは、判事のタービン、二番目は美し過ぎた妻!?(汗)。美人とは、罪深いものだ(嘘)。

 本当に悪いのは誰か?、映画を見て考えて下さい。(no.1095)

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