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サブ・カルチャー好きの情報スクラップ。ささらほうさらと彼岸を往復。

洋画系

人生の等価交換!?/『ベンジャミン・バトン 数奇な人生 』5

ベンジャミンバトン1
















ベンジャミン・バトン 数奇な人生
●原題;The Curious Case of Benjamin Button
●監督;デヴィッド・フィンチャー
●脚本;エリック・ロス
●音楽;アレクサンドル・デプラ
●出演;ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ティルダ・スウィントン 他
●DATA;ワーナー・ブラザーズ 公開 2008年12月25日/2009年2月7日
167分 アメリカ合衆国 製作費 約160億円・興行収入 約335億円
●受賞;オースティン映画批評家協会賞:助演女優賞
    ヒューストン映画批評家協会賞:助演女優賞、撮影賞
    ナショナル・ボード・オブ・レビュー:監督賞、脚本賞
    バンクーバー映画批評家協会賞:監督賞
    ワシントンD.C映画批評家協会賞:美術賞
    英国アカデミー賞:メイクアップ&ヘアー賞、美術賞、特殊視覚効果賞
    全米美術監督組合賞:美術賞(時代映画部門)


 DVDレンタルにて鑑賞。生まれたばかりの子猫のいる自宅と、老人ばかりの療養病棟。病気療養中の自分。私の日々は、老人と病気に囲まれている。ベンジャミンの育った老人ホームは、実感としてリアル…。

 「年をとること」、つくづく「考えちゃう」な1本。

●あらすじ

 ニューオリンズの小さな通り、腕の良い時計職人がいた。彼は駅舎に掲げる大きな時計を作っていた。時計を作る長い歳月の中、時計職人の息子は出征していく。見送った駅のプラット・ホーム。出迎えた時、一人息子は小さな棺に入っていた。それでも時計職人は時計を作り続ける。ついに時計は完成し、除幕式が開かれる。大統領、知事、大勢の賓客の見守る中、時計を覆っていた布が取り除かれた。美しい時計が現れ、皆の歓声が起こる。だが、その次の瞬間、歓声は悲鳴に変わる。時計の針が逆に動いていた。

 時計職人は語る。「もし、時間が逆に進むのなら、死んだ息子は家に戻り、結婚をし、子供を育てただろう」。その日、時計職人の姿は町から消えた。
ベンジャミン・バトン2

 100年後、2006年、ニューオリンズ。窓の外、雷鳴が轟く。大型ハリケーンが近づいていた。老婦人が、死の床にいた。枕頭台には、古い日記があった。一人娘に「日記を読んでほしい」と老婦人は言う。革表紙の日記には、大量の絵葉書と数奇な運命と真正面に向き合ったベンジャミン・バトンの生涯が記されていた。

      ■ ■ ■

 1918年のニューオーリンズ。第一次世界大戦の終結にわく夜。ボタン工場の社長の妻は、出産の苦しみの中にいた。妻難産の末、妻は命を失う。生まれたばかりの息子の顔を見た若い夫バトン(ボタン)。彼は半狂乱となり、老人ホームの玄関に赤ちゃんを捨てる。その老人ホームで働く若い家政婦クイニーは、子供の産めない体だった。異様にしわくちゃな赤ちゃん!。だが、信仰心の篤いクイニーには、変わった赤ちゃんは神様からの贈り物としか思えなかった。赤ちゃんはベンジャミンと名付けられ、老人たちと一緒に、穏やかにに成長する。この老人ホームに集う老婦人や老紳士たちは、それぞれ教養・経験のある人たちばかりだった。ベンジャミンはピアノやボード・ゲーム、そして処世訓など、得がたい知識を吸収していく。

      ■ ■ ■

 1930年の感謝祭の日。ベンジャミンは、ホームに住む老婦人の孫娘デイジーと出会う。ディジーは、小さな老人のように見えるベンジャミンが、実は自分と同じ年頃の少年だと、瞬時に見抜く。二人は心を通わせるが、成長したベンジャミンはホーム以外の世界に飛び出そうと決心する。彼は小さな船の乗務員になり、デイジーに絵葉書を送り続ける。

 ベンジャミンは、港町のホテルで裕福な人妻と恋に落ちる。彼女はドーバー海峡を横断水泳の挑戦者だった。だが、たった8キロ手前で、力尽きた過去を悔いていた。夜中のキッチン、ラウンジ、二人は多くを語り、愛し合うようになるが別れの日がくる。その頃、ディジーはバレーダンサーとして活躍していた。20歳を過ぎた二人。ディジーは花のように美しく青春を謳歌している。だが、ベンジャミンの容姿は60歳…。もう子供の頃のように、同じ価値観を共有することはできなかった。そして…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!

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 ニューオーリンズとブラッド・ピット!!。そうですよ〜、ブラピファンなら、あの大傑作『インタビューウィズバンパイア』を思い出すはず。吸血鬼は年を取らない。いつまでも美しい容姿!、変わらない若さ・魅力を保つ。だが、心はどんどん老いる。かつて若かった愛する人たち、皆老いて死んでいく。ブラピが演じたバンパイアは、不老不死を享受できない。人の血を飲まない。ネズミの血で、喉の乾きを癒すストイックな青年(?)だった

 人は、歳月とともに、相応に老いる。
 愛の喜び、躍動する体、青春の日は短い。
 生まれたばかりの赤子であっても、
 いつか、老る日を待つ…。


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 この“老い”と“死”。キリスト教文化圏では、大いなる神の呪いである。禁断の知恵の実を食べた二人を、神は楽園から追放する。エバに出産の苦しみを、アダムとエバともに死という属性=宿命を与えられる。生死を繰り返し、いつしか人は地に充ち、人類の歴史は刻まれる。
ベンジャミンバトン4
 その前提で本作を考える。

 そ〜なんですよ〜、本作『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は極めて神の存在を意識した作品なのです。息子を失った時計職人は、神に問うたはずだ。

 神は人類になにを望んでいるのか?。
 神が実在するなら、その御技(みわざ)をお示しください。

 神はその答えを、ベンジャミンに託した。ベンジャミンは、老いから生まれ、誕生の形で死を迎える。

 子供の心を持つ老人。
 青年の姿の老人。
 生も死の瞬間も人は記憶を捨て去る。


 神の存在を説明的に描いたシーンがある。ベンジャミンの養母クィニーが歩くことの出来ない彼をキリスト教会に連れて行くシーン。ベンジャミンは歩けるようになり、不妊症のクイニーは待望の赤ちゃんを授かる。等価交換????、祈祷した牧師は昏倒し、命を失う。

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 物語の中盤、ベンジャミンは若返る体に違和感を感じる。また、バレエ・ダンサーだったディジーは衰える体に焦りを感じる。いつまでも若さを保ちたい気持ちは、多くの人の心に潜む欲望だ。だが、若さが保たれれば、変わらないの愛を望む。過度の欲求は、満たされることはない。ディジーは、普通に成長し、夢を叶え、挫折し、やっと愛する人のもとに戻る。だが、幸せの日々は短い…。

 ベンジャミンとディジーの愛の生活は、文字どおりベッドだけあれば幸せなものだった。だが、歳月の中で所帯道具がだんだんと増え、ディジーは身ごもる。愛の生活が家庭に変わる瞬間、ベンジャミンは家を出る決心をする。若すぎる父親、子供の成長と自分の老いが平行する当たり前の人生が、彼には訪れない。若さ、妻、家庭、財産、娘の誕生…、すべてを手にした時、オートバイに乗り姿を消す。彼は「得ることは失うことだ」と人生の中で学んでいた。

 この終盤からの映像が美しい。どんどん美しい青年に逆行するベンジャミン。CG加工の技術力の驚き!。もう実年齢として、若くないはずのブラッド・ピットが、もう喩えようなく美しい。

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 ディジーを演じるケイト・ブランシェットも美しい。ケイトの演じるバレエ・ダンサーはエレガント!。彼女は言う「バレエの美しさは、体の線の美しさなのよ」。言葉どおり、踊る所作、体の線の美しさは溜息もの!!。


 セピア色の画面。ノスタルジックな風景。奇跡のような喜びがあっても、救いようのない悲しみがあった。宿命という罪と罰…、聞えないような小さな囁きが全編に流れる。

 老人の姿に若者の心。
 死によって閉じられる人生の記憶。
 だが、魂は不滅だと、雷鳴が告げていた。

 最初の恋人エリザベスの人生だけが、神不在の中での人の幸福感を具現化していた。

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ベンジャミンバトン3

希望と絶望の二重螺旋!?/『落下の王国』5

落下の王国2





















●落下の王国 
●原題;The Fall
●監督;ターセム・シン
●脚本;ダン・ギルロイ /ニコ・ソウルタナキス /ターセム・シン
●衣装デザイン:石岡瑛子
●出演;リー・ペイス /カティンカ・アンタルー /ジャスティン・ワデル /
    ダニエル・カルタジローン 他
●DATA; 英語 2006年9月9日公開 118分
    インド・イギリス・アメリカ合衆国
    ※第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭/最優秀作品賞

 4年前に公開された作品。レンタルで鑑賞。一月もそろそろ終わり(溜息)。今日は、2ヶ月休んでいたコーラスの会長さんから連絡があった。「ブラウスが出来たので、」と代金のお知らせ。辞める気でいたのに優柔不断で発表会用のブラウスを誂えてしまった(汗)。蜜柑色!!、絶対に普段着には出来ないのだヨ…○×※△。。。秋には発表会がある。会長さんに悪いので少しは練習に参加しないと、と、と、、、またまた優柔不断。それにしても、衣装と言うのは不思議なもので、それなりの衣服や制服に着替えれば、違う人間に変身できる。本作は世界的なデザイナー石岡瑛子さんが衣装を担当している。さて、簡単なあらすじと感想など。

●あらすじ

 昔、昔、ロサンゼルス。売れない俳優のロイは、疾走する列車を目前に、鉄橋から飛び降り、馬に乗り移るスタントに挑戦した。だが、無謀なスタントに馬は水死、ロイは大怪我をする。教会付属の病院で治療を受けたが、ロイの足の感覚は戻らず、歩けなくなってしまった。さらに恋人の新人女優はロイを捨て、主役男優の恋人に…。

 同じ病院の小児病棟には、収穫中、オレンジの木から落ち、左腕を骨折したアレキサンドラがいた。幼い彼女には、入院生活は退屈。あちこち覗いては、遊び相手を探していた。ロイの病室にもぐりこんだアレクサンドラ。動けず、失意のロイに、アレキサンドラの無邪気さは救いだった。お互い退屈な日々を送っている二人。ロイはアレクサンドラに作り話を始める。

落下の王国P
 “大昔、遠くの国に遠征に出たアレキサンダー大王。見渡すかぎりの砂漠の中、数人の兵と迷子になってしまう。飲み水も尽き、途方に暮れるアレキサンダー大王…。そこに、一人の兵士が走り寄る。兜一杯の水を差し出し「これが最後の水です」と言った。さてアレキサンダー大王はどうしただろうか?。”答えは…。次に始まったのは、ロイが主人公のお話。アレクサンドラは、お話に夢中になってしまう。

 病院中を自由に歩き回っているアレキサンドラ。動けないロイに悪い企みが浮かぶ。自殺のための薬、モルヒネを手に入れるため、アレキサンドラを利用しよう、と。薬を持ってくるが、Eの向きが逆だったため、彼女は3錠しか持ってこなかった。ロイのお話は面白く、アレキサンドラは夢中になってしまうなるのだが…。>>>つづきはDVDでどうぞ!。

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 君にささげる、世界にたったひとつの作り話。

   構想26年、
   13の世界遺産、
   24ヶ国以上でロケーション
   制作期間4年


 とにかく素晴らしい映像美!!。 ピーカンの青空、見渡すばかりの大砂漠。ピラミッドに、ローマの遺跡、カンボジアの仏教遺跡、万里の長城、タージマハールetc.etc.。他、有名な世界遺産が映画の描きわりのように登場しては消える。ターセム・シン監督はCGを避け、すべて実写にこだわったそうだ。だから撮影に4年もかかった!?。これは世界遺産のコレクションボックスのような…!?!?!、そんな映像の驚きに満ちている。

 広大な遺跡の中を冒険するのは、愛するものを失った復習に燃える男たち。覆面の山賊、妻を奪われたインド人、自由を求めるアフリカの戦士、腹に鳥を守る行者、蝶を探す動物学者、利口なリス猿…、皆アレキサンドラの宝物箱の住人たちだ。小さな玩具に、ロスの狂おしい復習心、恋人への恋着と未練が乗り移る。だから、どんなに美しい映像にも、ロスの心象風景、孤独と復習心が画面を満たしている。クリアの空気感と鋭利さは、サルバドール・ダリの描く風景のようだ。芸術家の目の欲を満たす「極限の美しさ」というものは、孤独の天使が恩恵かのだろうか?。敵対するもの以外は、点景のようで、人の暮らしのない作り話…、活路が見つからない。

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 物語はお伽話と現実が錯綜しながら進行する。

 魂が深く交われば、交わるほど、ロイの孤独が明瞭になる。アレクサンドラの一家は東欧からの移民だ。彼女一家は、働き手だった父を失い、極めて貧しい。母や姉妹は英語が話せない。一番幼い彼女だけが英語の読み書きが出来る。彼女は、純真無垢に“生”に向かう希望そのものだ。だが、ロイは違う。死に向かうことだけを考えている。アレクサンドリアへ語るお話は、彼の心のままにどんどん悲惨な敗北の物語へ変容していく。ロイの絶望は現実を侵食し、アレクサンドラは落下による大怪我を負う。絶望感から、幼い女の子を不幸に巻き込むロイ…。そうなのだ!!。諦めることこそ、すべての不幸のトリッガーなのだ。

 落下する、
 落下する、
 落下する、、、、、


 人は何度も落下体験をする。少しだけの落胆、残念な落胆、幸福の絶頂から、仕事の成功から、人は落下する。そして、落下を用心し、落下を脅える。だが、上昇しつづけることは出来ない。どこかで落下する。落ちながら、「これでおしまいだ」と思うか?、「また、上ろう」と思うか?…。落ちる風景を楽しみ、落ちた先の風景を楽しむことが出来たら、人は何度でも落ちることが出来る。

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 地球で人が人となり、綿々と文化を作り、滅びの歴史を繰り返した。古代の歴史は、滅びの証人だ。誰もいない廃墟を人は美しいと感じる。戦勝した王の目線、滅びの美学に惑溺する。一種の退廃趣味の甘い香り…、老いた知識人の驕り…。

 すべての滅びの呪文から、世界を救うのは、幼い子供の笑顔。

 それさえ。単なるたわごとに思えるほど、
 偉大な文化遺産と映像美に圧倒される。

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落下の王国1

100人に1人はサイコパス!?/『チェンジリング』5

チェンジリング・1

















●チェンジリング Changeling
●監督;クリント・イーストウッド
●脚本;J・マイケル・ストラジンスキー
●音楽;クリント・イーストウッド/ ミナミ・カトウ
●出演;アンジェリーナ・ジョリー/ ジョン・マルコヴィッチ
●DATA;アメリカ合衆国 2008年5月20日公開 142分

 春間近、今日は冷たい雨が降っている。この雨は夜半には雪に変わるそうだ。夜明けを前にした空は一層暗く、春の直前は深々と寒い。これは暗さの底から光を求め、不撓不屈、権力と闘う女性の物語。深夜WOWOWにて視聴。実際の事件を元に映画化されたそうだ。真実の重さに圧倒される。簡単なあらすじと感想など。

●あらすじ

 1928年、ロサンゼルス郊外。クリスティンは、電話交換手として働くシングル・マザー。9歳の息子のウォルターと二人、平穏に暮らしていた。クリスティンの勤務中、留守番をしていたウォルターが消える。警察に届けるが、誘拐か?、家出?か判らないまま時間が過ぎ、クリスティンは苦悩の日々を過ごす。辛い日々の心の支えは、長老会教会のグスタヴ・ブリーグ牧師だった。

 失踪から5か月後、警察から「息子が発見された」と連絡があり、クリスティンは喜び駅に向かった。そこにいたのは息子に似た少年…だった。自信満々のジョーンズ警部の談話に、クリスティンはその少年は家に連れ帰ってしまう。少年は記憶喪失だと言い、家の様子も不案内。翌日、「少年は別人」と申し立てるクリスティン。だが、警察は「事件のショックで別人のように見えるのだ。帰還兵にはよくあることだ」と取り合わない。挙句の果てに「母親失格の冷たい女だ」と、クリスティンを罵倒する始末…。

 連れてこられた少年は、ウォルターにはない割礼がほどこされ、身長は9cm低い。前歯の形も違う。歯型は歯科医が確認、小学校の担任教師も「まったくの別人」と法廷証言を約束してくれた。クリスティンの活動は、ジョーンズ警部の知るところになる。警察に間違いがあってはならない。告発直前に警部に呼び出されたクリスティンは、ロス市立の精神病院に極秘入院させられてしまう。事件の相談にのっていた長老会牧師は、告発直前に失踪したクリスティンに不安を感じていた。協力者とともに安否確認に警察に行くが…。

 精神病院には“コード12”と呼ばれる患者が多数いた。病院の食堂、元売春婦だった女性がクリスティンに話かけてくる。彼女も“コード12”、警官に暴行され、不法監禁されたのだ。反抗的な態度では事態が悪化する。ここの対処法を教えてもらい、にこやかに対応するクリスティン。だが、医師が差し出した退院の条件は、警察捜査同意書だった。サインを拒んだクリスティン。医師は、看護婦に電気ショック処置を命じる。電気コードを頭に装着され…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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チェンジリング・P


 1928年といえば昭和3年だ。

 80年前のアメリカは文化的!!。電化製品を除けば、日本の昭和40年ぐらいに思える。街は平和で、穏やか、瀟洒なインテリアの家、仕立ての良いスーツに上品なドレス…。だが、物語が進むにつれ、大きな権力に隠された悪魔的な行為と、本当に悪魔のような所業が明らかになる。

 前述したように、本作『チェンジリング』は、1920年代、実際にロサンゼルスで起きたゴードン・ノースコット事件【ゴードン・ノースコット事件(Gordon Northcott);アメリカ合衆国で1920年代後半に発生した連続少年誘拐殺人事。別名をワインヴィル(現在のミラ・ロマ)養鶏場連続殺人事件"Wineville Chicken Coop Murders"と呼ばれる。裁判で有罪になったのは3人の殺害であるが、本人の告白では、犠牲者は映画に登場するウォルター・コリンズなど20人としている。(ウィッキペディアから引用)】を元に作られた物語。

 映画には描かれていないが、このシリアル・キラーには、実の母親と言う共犯者がいること。犠牲になった少年たちは性的虐待を受けていたこと、遺体は消石灰で処理し、砂漠に埋めたため殺害を法廷で立証できたのはたった3人であることなど記録されている。身の毛がよだつというのは、このような事件を言うのだ!!。

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 題名の『Changeling』は、若い娘や美しい子供、特に金髪の子供がトロールや妖精の子と交換されると言うヨーロッパの古い伝承。日本ドラマによく登場する取替え子は、赤ちゃんの時に産院で交換される話が多い。生まれたばかりの赤ちゃんならいざ知らず、9歳の子供が別人に替わるのは相当に無理な話だ。だが、それが実話なのだから、いくら80年前でも????。「この子は別人です」と母親が言っているのに、「あなたの勘違いだ」と強弁される。自分の子もわからないのは精神異常だと人権無視の精神病院に監禁される!!!。本当に怖い…。

 映画はゴードン・ノースコット事件の全容を明らかにするとともに、犠牲者でありながら、さらに過酷な経験をすることになったクリスティン・コリンズの異常体験を中心に進行する。とにかく、闘うお母さんは毅然としている。冷静・沈着!、時には冷たく見えることもある。精神病院での、彼女の強さ、理性は超人的だ。その強い母親役は、アンジェリーナ・ジョリー。彼女の意志の強い顎の線、強い光を宿した瞳は、役の個性を能弁に語っている。

 ジョーンズ警部の保身と不正、精神病院の患者への虐待、裁判経過、犯人の死刑執行と、事件は時系列で丹念に描かれている。一番の不思議は、「自分はウォルターだ」と言い張った家出少年!?!?や、「僕は子供だから罪にならない」と叫ぶ共犯の少年。ここはもう少しシーンの追加があっても良かったかもしれない。

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 アメリカ合衆国は広い…。

 さまざまな理由で人が居なくなる。離婚の親権問題や破産、犯罪被害者などなど、未成年の失踪は多い。手がかりを求め、牛乳の紙パックに個人写真など印刷されているのを見たことがある。その失踪者の0・数%は、無差別連続殺人の犠牲になっているかもしれない。怖い統計だが、男性で100人に1人、女性で300人に1人が、サイコパス(反社会性人格障害)である可能性があるそうだ。

 犯人のゴードン・ノースコットは快活な青年風に演じられる。身なりも整え、とても極悪な殺人鬼に見えない。彼は、20人以上殺している。それでも、地獄を怖れ、天国に行こうとしている。自己都合、被害者の痛みに共感できない心…。これがサイコパスの典型なのだろう…か。映画も怖いが、実際の事件の方が数倍も陰惨だ。


 本作には程度の違いはあるにせよ何人ものサイコパスが登場する。人は怖い。国家権力を自分自身の力と勘違いした者。欲望を抑えることの出来ない者。嘘をつくことに罪悪感のない者…。身を守るすべは、良き隣人なのだろうか…。

 本当の恐怖を映像から感じることは少ない。
 だが、本作はリアルな恐怖が迫ってくる。
 牧師役のジョン・マルコビッチの存在感は特筆!。

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チェンジリング・2

思索の迷路、我思うの我の我!?/『コッポラの胡蝶の夢』4

yume


















●コッポラの胡蝶の夢
●原題;Youth Without Youth
●原作;ミルチャ・エリアーデ
●監督/脚本;フランシス・フォード・コッポラ
●出演;ティム・ロス/ アレクサンドラ・マリア・ララ/ ブルーノ・ガンツ
●DATA;2007年12月公開 124分 アメリカ・ドイツ・イタリア・フランス・ルーマニア

 過度に「疲労している」ってのは、なかなか自覚できない。

 あらゆる体のパーツが老化していく感じ…。と言うか、、、、自分の体が自分のものではないような感覚。肉体の疲労だけでは、なかなか老化感にまで至らないかもしれない。結局は精神疲労、脳の過労が老化を加速させるのだろう。一昨年からのゴタゴタドタバタで「疲労している」をヤバく感じた。今は意識的に睡眠時間を長くしてる。本作は人ごとと思えない(汗)、老化をテーマにしたファンタジー。あの!、あの!フランシス・コッポラ監督、10年ぶりの作品だ。簡単なあらすじと感想など。

●あらすじ

 1937年、ルーマニア。クリスマスの晩、一人ベッドで目覚めた言語学者のドミニク。若さと死、不思議な幻影を見ていた。夢には若き日の恋人ラウラが現れた。彼は、恋人と別れてまで没頭した言語研究の未完を思い、自らの人生が「たった1冊の本さえ書き上げていない」と絶望する。孤独の中、虚無感に囚われ、雪の街をさまよいを歩く。「何処か遠い町で死のう」と決心したドミクク…。翌、1938年の復活祭の日。遠い町、ブカレストにドミニクはいた。死に場所を探し、交差点を渡ろうとした時、雷鳴が轟き、雷に打たれてしまう。

 病院に運ばれたドミニクは、全身火傷を負っていた。だが、医師の声が聞こえ、奇跡的に目覚める。意思の疎通を確認する医師に、年齢を問われ指で「70歳」と答える。だが、包帯交換する看護婦たちは、「あの男はもっと若いわ」と囁く。落雷の巨大な電気エネルギーは、ドミニクの体に劇的な変化を起こした。医師から連絡を受けた専門家スタンチェレスク教授は、ドミニクの変化を落雷によるものと推測した。包帯が取れる頃には、ドミニクの肉体は30歳代のものになっていた。白髪、薄い頭髪には豊かな黒い髪が生え、新しい歯が生え変わっていく。頭脳は、見たものをすべて記憶し、本は持っただけですべての内容を理解するようになっていた。教授はドミニクの事例を学会雑誌に発表してしまう。

 教授の論文は、隣国ドイツ、ナチスの知るところになる。ナチスは欧州制覇を目指し、その魔手はルーマニアにも及んでいた。ヒットラーの命令で「不老不死」を研究していたナチスの科学者は、ドミニクに注目。真偽を確かめるため女スパイを派遣した。女はベッドをともにし、ドミニクの若さと能力を探る。ドミニクの言語能力の高さと、若返りを事実と知ったナチス。病院からドミニクを拉致しようとする。だが、危機一髪。彼はスイスへと逃亡することが出来た。この日を予想した教授は、ドミニクのために口座を用意すらしていてくれたのだ。不思議な能力で亡命生活を続けるドミニク…。

 世の中は目まぐるしく変わり、ナチスは降伏し、世界大戦は終わっていた。そんなある日、ドミニクは山に向かう女性ドライバーに道を聞かれる。彼女はかつての恋人ラウラとそっくりだった。山を降りたドミニクは雷鳴が聞く。女性たちの安否を確かめるために、ドミニクは村人とともに山に向かうが、彼女は…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

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 原題は『若さ無き若さ(Youth Without Youth)』。

 ドミニクは小柄で線の細い雰囲気の俳優さん、ティム・ロス。先日、紹介した『インクレディブル・ハルク』でブルースを演じていた。ティムは理性的で、この不思議な出来事に巻き込まれる人物を、陰影深く演じていた。ティムの演じる老いた学者ドミニクは、死の寸前、何者かに引き戻される。彼は若さと取り戻し、加えて、常人の何十倍もの記憶力と、念動力(サイコキネシス【psychokinesis】超心理学の用語。静止した物体を動かすなど、術者が念じるだけで事物に物理的効果を与える現象。念力。PK。;ヤフー辞書から引用)のような超能力を身につける。夢のような…。若さと偉大な能力!!。彼は以前中国語を学んだ時、漢字の多様な複雑性に写真機のような記憶があれば…と嘆息していた。アジアの言語理解には、チベット語、サンスクリット語、中国語理解が不可欠なことだったのだ(!)。蘇生した後も、生涯の研究“言語の起源の研究”を続ける。そこには超越的な存在が垣間見え、ドミニクは宗教学も探求していく。

 このことをわが身に置き換えてみれば、孤独な身の上以外は、夢のような変身だと思ったりする。30歳代から老いない若さ、常人を凌駕した脳力!!、研究すべき課題(使命)。だが、一点だけ瑕(きず)がある。自分の分身のような男が、いつも自分を看視されているのだ。自分が眠っている時に、抜け出し活動するドッペルゲンガー…。この分身が実に薄気味悪い。“スーパーナチュラル”の2シーズンに“15 呪われたキャンパス【Tall Tales】”に“トリックスター ”と言う妖怪=古き神が登場した。この分身は、“トリックスター”と同様に古き神=シバ神の化身のように、物語は曖昧に超越した存在の関与を匂わす。父なる神は人が奢りを戒めるために、世界中の言語を分けた。ドミニクの研究は、太古に封じた異端な神々の復活なのかもしれない。ここらへんの不幸なエピソードは、DVDでお楽しみくださいませヨ。

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胡蝶の夢

昔者荘周夢為胡蝶。栩栩然胡蝶也。
  昔、私は夢の中で蝶になった。蝶となり嬉しく飛び回った。

自喩適志与。不知周也。俄然覚、則蘧蘧然周也。
  蝶になっているときは、自分が人であったことは忘れていた。
  目覚めて見れば、自分は自分なのだ。

不知、周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。
  私の夢が蝶なのか、蝶の夢が私なのか、
  判然としないのだ。

周与胡蝶、則必有分矣。此之謂物化。
  私と蝶は違うが、私は私で分けては考えられない。
  見た目は違っても私そのものは同じ、
  これこそが、本質なのだろう。

 作者は荘子。胡蝶の夢(こちょうのゆめ)は、道教の始祖の一人、荘子の有名な作品だ。作中、何度も引用される。

 若いドミニク、老いたドミニク、若くなった不老のドミニク、どのドミニクもドミニクであり、受け入れることで、現実は実体化し、拒絶することですべて虚無に帰る。無そのものもドミニクであるのだ。そこには時間も空間もない。

 この不可思議な詩を、理屈好き、理論好きの西洋人が理解しようと思うと、本作のように科学=雷の力を利用しなければ、物語が成立しない。荘子は、ただ夢の中で蝶になり、蝶であったことが、真実か、真実でないのか?、そんな瑣末なことは気にもとめない。ただ、蝶であって、嬉しく飛び廻った感覚は生身の事実と何も変わらないことの不思議さを問うっているのだ。

■■■

 本作の方は、どんどん東洋的なものをモチーフに、高尚、あるいは衒学的に進んでいく。

 若さを得た老学者は、無知無謀であった若さの喜びを追体験出来ない。「自分の本当の年は87歳なのだ」と恋人に言うが、それを信じる恋人ではない。25歳の恋人には、40歳でも87歳でも結婚相手でないことは同じなのだ。この女の若さは残酷だ。落雷によってシャーマン体質になってしまった恋人…。彼女は夢の中で時空を旅し、どんどん老化してしまう。彼女が引き寄せる過去の人格は、ドミニクの研究に関連した魂ばかり。この異常な能力は、あの分身の仕業??、すべてのネジの歪みを正すために、ドミニクは分身を殺害してしまう。

 ここで芥川龍之介の『杜子春』を思い出した。

 ドミニクは時空を超えるが、夢は時空を超えることはない。この曖昧さを理解する東洋と、理解できない西洋の違いと感じ、冷酷に物語は終わる。出来れば『杜子春』のように、1937年のクリスマスの晩に戻ったまま、エンディングを迎えたいと思うのは、東洋人の甘さなのだろうか?。

 理屈を求めず、ありのまま物語を鑑賞して花○。
 難しく考えると迷路に嵌って、大凶!?。

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圧倒的な強さ!アメコミ・ヒーローのきわみ!/『インクレディブル・ハルク』4

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●インクレディブル・ハルク (The Incredible Hulk)
●監督;ルイ・レテリエ
●脚本;ザック・ペン
●出演;エドワード・ノートン /リヴ・タイラー /ティム・ロス
●DATA;2008年6月13日 公開 112分 アメリカ合衆国/ブラジル

 ラジオを聴いていたら「飼い猫が家出して3日帰ってこない」と読者から投稿があった。昨年は、猫がこの時期、行方不明&大怪我帰宅で、傷の縫合をしたが、化膿の状態が悪く、完治まで三ヶ月かかったしまった。田舎の猫は、ついつい脱走兵になり怪我をしたり、そのまま行方不明になってしまうことがある。猫が帰ってこないと、帰ってくるまで眠れない。深夜WOWOWで視聴。猫が帰ってきたので、寝ようと思っていたのに、最後まで見入ってしまった。あらすじと感想など。

●あらすじ

 ブルース・バナーは、平凡な遺伝子学者だった。実験中に誤って大量のガンマ線を浴びてしまう。結果、体内のDNAが変異。心拍数の上昇により体が変化する奇病に罹ってしまう。変身したブルースの、偉大な力を見たロス将軍は、実験の成功を喜ぶ。ブルースは知らず知らずに、軍の極秘実験に参加させられていたのだ。軍の目的は最強の戦士を作ることだった。

 力を軍に利用されることを恐れたブルースは、ブラジルへと逃れる。ポルトガル語を学びながら、ガラナコーラの従業員になり身を隠す。そして、合気道の呼吸法を学び、心拍数をコントロールする術を学ぶ。また、ネットを通して同じ遺伝子学者のブルーと交信、グリーンと名乗って、自分の体の変異の治療法を探っていた。

ハルクポスター 変身から3ヶ月が過平穏に過ぎた。清涼飲料会社の仕事にもなれたある日のこと。うっかり怪我をし、ブルースの血液が工場のラインの上に落下。製造中のコーラの瓶に血液が付着。誰にも気付かれず、アメリカに出荷されてしまう。彼の血液は、ガンマ線に汚染され猛毒に変わっていた。一口コーラを飲んだ男は昏倒。ブルースの居場所が軍に知られてしまうことになる…。軍の極秘部隊がブラジルに向かう。>>>つづきはDVDでどうぞ!。

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 TV版のハルクは大好きだった。最初に好きになったアメコミ・ヒーローの一人だ。暴れん坊だが、内面はインテリでナイーブ!!。気は優しくて力持ち!、女の子が好きなタイプの鉄板!?(笑)。残念なのは、肌色が緑…なだけ(汗)ヨネ。日本TVで放映していた昔のハルクは人間サイズ。実写なのでボディビルダーの人が演じていた。

 本作はハルクは、随分大きく!、ほとんど不死身!!。題名通り“Incredible”!!。「信じられな〜〜い!!」強さなのだ。難点は、前と同じ。変身中のことは記憶にないこと。これって、酔っ払ってエバっちゃっている人と変わらない(笑)。変身中も、ちゃんと恋人を気遣ったり、ブルースの優しさは残しているのも好ましい。マッチョになった時の雰囲気は『ワンピース』のトナカイ状態!?。変身すると服が破れる。全裸になるのを避けるためにのびのびユッタリサイズのゴムウェストのズボンを買うシーンもほほえましい。

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 本作の悪のはアメリカ軍のロス将軍。兵士の犠牲など、まるで考えていない。超人になったハルクは鋼鉄の皮膚?、弾丸もバズーカ砲も、機銃掃射も蚊に刺されたほども感じない。ただうっといしいので、手に車?を持って盾にするお茶目さ(笑)。TV版ではまだフランケンシュタインほどに人間らしさが残っていたが、このハルクはコミックが描くハルクをはるかに凌駕し、びっくりするほど強い。このハルクと対等に戦えるクリーチャーは凶悪なエイリアンか?、プレデター、あるいは鉄腕アトム???、と思えるほど強い。

 本作で登場するのは、同じガンマ線とブルースの血清で変身した最強兵士ブロンスキー。彼の変身後の姿はエイリアン+ゴシラ系、背骨が変形し、背中に飛び出し、人間の態がまったくない。体もハルクの2倍はある!!。いくらガンマ線でも、「そりゃ〜ナイヨ!!」と、突っ込みどころ満載の怪物なのだ。最後の戦いは二人の巨人怪物が戦う昔の東映映画状態だった。このワクワク感は、子供より昔子供の方が感じるかもしれない。

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 全体の色調、空気感はダークでノイジーな雰囲気。ハルクは決して明るいヒーローではない。今回のハルクは、たとえ怪物であってもブルースの優しい個性を残したCGデザインになっており、彼がこの奇病(?)から助かるのか?、今後の展開が愉しみだ。

 続編がありそうな雰囲気で終わっている。どんどん続いても欲しい。 

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ハルク・3

上がる!挙がる!、見えたもの!!/カールじいさんの空飛ぶ家(原題:UP)』5

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カールじいさんの空飛ぶ家
●原題;Up
●監督;ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン
●脚本;ボブ・ピーターソン/ロニー・デル・カルメン
●音楽 マイケル・ジアッチーノ
●声の出演;エドワード・アスナー/クリストファー・プラマー/
      ジョン・ラッツェンバーガー/ジョーダン・ナガイ
●DATA;配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ(ピクサー/PIXAR)
    公開 2009年5月29日/2009年12月5日 上映時間 104分

2010年、最初の映画鑑賞。1/4に高崎109シネマにて鑑賞。吹き替え版、いつもながら画面の中の文字も皆日本語になっている。手抜きのない作業に脱帽!!。本作『カールじいさんの空飛ぶ家』は、アニメとして初!!第62回カンヌ国際映画祭のオープニング作品になった話題作。おまけの『晴れ、ときどき曇り(Partly Cloudy)』=雲とコウノトリのアニメも最高!。簡単にあらすじなど…。

●あらすじ

 1930年代。カールは冒険家に憧れている無口な少年。映画館で、憧れの冒険王のチャールズ・マンツの活躍を見て心躍らせていた。マンツは巨大な鳥の骨格を南米の秘境から持ち帰るが、贋物と決めつけられ、冒険家協会の協会員の資格を剥奪される。名誉を傷つけらたマンツは名誉回復のため、生きたままの巨大鳥の捕獲を誓い、南米で向かい、そのまま行方不明となる。

 その頃、カールの家の近くに古い空家があった。その空家は、近所の冒険少女エリーが秘密基地にしていた。エリーに誘われ、秘密基地に招かれたカール。屋根裏で、足を踏み外し骨折。家で寝ているカールのもとに、エリーが見舞いに現れる。成長したエリーは動物園の南米館の説明係になり、カールは動物園の風船売りとなる。二人は結婚し、あの空家を購入。幸せな、幸せな毎日が続く。子供の頃からの南米探検の夢は、長く二人の夢だった。毎日、少しづつ小銭を貯めるが、日常の生活雑費、さまざまな修理・修繕に使われ、瓶は一杯になることはなあった。

up/poster
 結婚し、60年近い歳月が流れる。いつもカールより元気だったエリー…。闘病の末、死んでしまう。エリーの大好きな家の中には、カールだけが残された。家の周囲は、再開発用地となり、カールとエリーの家だけが残っていた。関係者から、立ち退きを迫られ、カールはイラ立つ頑固ジジイになった。腰痛持ちの78歳、それが今のカールの姿だ。ある日、カールの家に“ジュニア自然探検隊”の隊員、ラッセル少年が訪ねてくる。“お年寄りお手伝いバッジ”を手に入れれば、“シニア自然探検隊員”に昇格できると言うのだ。

「何かお手伝いすることはありませんか?」

ラッセルとの出会いはすべての始まりだった…。>>>つづきは映画館でどうぞ!!。

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 正直な話、映画館で予告を見た時、「この映画は見たくないな〜〜〜」と思った。

 妻に先立たれた偏屈じじい!?。我が家にも約1名、そんな人物がいる(苦笑)。大昔、風船おじさんと呼ばれた冒険家の男性が、北海道沖の海に消えた。風船じゃ、海は越えられない(汗)。気が変わったのは、エリーとカールの夢が“ギアナ高地”への冒険と知ったから。

 私は、本当に、マジに!、嘘じゃなくて!?、“ギアナ高地”に行きたいと思っている。地面全部が水晶に覆われた場所!!、未知の植物や生き物が太古のまま生きている場所!、世界中で一番魅力的な秘境!!。それが“ギアナ高地”なのだ。

 あの“ピクサー”が“ギアナ高地”をどう描くか?。ワクワクした。

 朝日新聞の映画評、沢木耕太郎さんが、映画の冒頭を絶賛していた。最初の10分間、エリーとカールの出会いと別れが描かれる。70年!!、つつましくて、幸福な人生。どこにでもある、当たり前の幸せに溢れていた。庭付きの小さな家、手作りの可愛い内装、思い出の雑貨や家具…。子供にこそ恵まれなかったが、二人の夢のつまった綺麗な家が丹念に描かれる。

 時代が変わり、エリー亡き後、優しいカールは、危険人物に認定される。法廷の処分は、老人ホームに強制入所。老い先短いお爺さん、「この先、何があるんだ!!」って、そんなところから物語が始まる。

 原題は“UP”だ。この作品の題名は『UP』でしかありえない!!。『カールじいさんの空飛ぶ家』って邦題は、作品のコンセプトを読み違える可能性がある。

★キャッチコピー

愛する妻が死にました― だから私は旅に出ます。

いくつになっても、旅に出る理由がある。

じいさんだって、飛べるんです。


キャッチコピーも、なんだか変!!。

このお話は飛ぶ話でもなく、旅の話でもなく、“捨てる生活”なお話なのだ。

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 二人の思い出のつまった大事な家。
 カールはエリーの夢“パラダイスの滝”に運ぶ。 

 二人の家。思い出は本当に素晴らしくて、捨てること(立ち退き売却)が出来ないカール。カールは思い出に囚われている。一生懸命になんかに打ち込むことは、思いに囚われることにもなる。もう一人の主人公、ラッセル少年も、バッジをコンプリートすることに囚われている。そして、憧れの冒険王チャールズ・マンツも巨大鳥捕獲に囚われている。目的を持った生き方!!、それは悪いことではない。だが、過度の囚われ、執着は人を孤独の檻に追い込む。だから『UP』しなくてはいけないのだ。

 2012年、スピリチュアル系オタク・カルチャーでは“アセンション”と言うワードが注目されている【※ascension;上昇、即位、昇天】。19世紀の産業革命から始まった化石燃料を消費し続ける文明は、終末を迎えている。「消費続けることを良し」とする、経済至上主義は段階的に破綻し続けるだろう。消費することを美徳とする考え方、富=幸福、富=自由な消費、自由な消費=幸福、と言った単純な図式に、我々は洗脳されている。そこから脱却すること、囚われから自由になること、それが、この映画の題名『UP』ではないだろうか?。

 それを意味する象徴的なシーンが後半に描かれる。

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 通路の立ち看板に宮崎駿監督のコメントがあった。

 本作は、ジブリイズムのリスペクトに溢れている。後半、ラピュタの名シーンに似た部分があったり…(笑)。大時代の飛行船、複葉機、お爺さんとくれば、もう宮崎ワールドの常連だ。また、日本の玩具、バウリンガルを装着した犬たちは最高にクール!。中でもカールになつくでぶちょのラブラドール(?)ダグは、ブラック大魔王の愛犬ケンケンみたいで、賢くて可愛い!!。彼のその後は、エンドロールに詳しいので、絶対に最後まで見た方が良い!!。

 愛するって言葉は美しい。
 愛するってことを言い訳にした。
 誠実に、真に愛することは難しい。
 愛する行為が執着になっていないか?
 相手を自由にすることも愛の最上級ではないか?
 捨てる行為も、究極の愛になる可能性。
 ちょっとだけ、違う愛が見えてきた。


 本作を観て、少しアップした気持ちになった(汗)。
 大掃除して、身軽に!、捨てる生活!!。

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up/3

ローマ観光!と猟奇連続殺人!?/『天使と悪魔』5

天使と悪魔/2

















●天使と悪魔●
●原題:Angels & Demons
●原作・製作総指揮:ダン・ブラウン
●監督:ロン・ハワード
●出演:トム・ハンクス/ユアン・マクレガー/アイェレット・ゾラー/
    ステラン・スカルスガルド/ピアフランセスコ・ファビーノ/
ニコライ・リー・カース/アーミン・ミューラー=スタール 他
●DATA;公開 2009年5月15日 138分 アメリカ合衆国 制作費1.5億ドル

 今年5月公開だった作品。DVDの発売を待って鑑賞。秘密結社とバチカンの陰謀、反物質!?!?!?。学研の“ムー”の世界だったりする(笑)。前作の『ダヴィンチ・コード』もそうだったが、自分の読書フィールドと重なり過ぎていると、なんとなく二の足を踏む。前作映画のラストは意識不明になるテイタラク!?。原作と違うラスト???を確認してない(謎)。徹夜明けで眠くても、映画館では寝ない。よほど退屈だったのだろう…。と、今回は自宅鑑賞なので、寝る可能性大!?。ところが、ところが…。

●あらすじ

 バチカン宮殿の奥深く老齢の教皇が死ぬ。彼が息子のように愛情を注ぎ、教育したカメルレンゴ/教皇の秘書長パトリック・マッケンナは、儀礼どおりに教皇の印“漁夫の指輪”を破壊した。その瞬間、次の教皇決定までパトリック枢機卿が教皇の全権を代行する。世界中の信者が嘆き悲しむ中、厳粛に葬儀が行われた。葬儀から9日間の服喪後、コンクラーヴェ/教皇選挙が行われる。投票権を持つ世界中の枢機卿がバチカン宮殿に向かっていた。

◆ ◆ ◆

天使と悪魔ポスター
 同じ頃、セルン/CERN(欧州原子核研究機構)では、反物質の合成に試みていた。この物質の合成は、「(かつてガリレオがそうだったように)神の禁じた科学ではないのか?」と案じる人物がいた。彼はセルンに勤務する司祭レオナルド・ヴェトラだった。彼は反物質の合成の成功と危険性を、逐次教皇に知らせていた。研究員の注視する中、かつてない量の反物質が封じ込まれた。成功に喜ぶ中、事件は起こる。神父が何者かに殺害されたのだ。研究所の厳重なセキュリティは、司祭の眼球によって破られ、反物質のカプレルは何者かに持ち去られてしまった。もし、反物質が他の物質と接すれば、人類は未知の災厄をもうむることになる…。

 この一報は、ただちのバチカンに知らされる。時を同じく、コンクラーヴェに参加する4人の枢機卿が行方不明になる。彼らは、次期教皇候補として人望の厚い枢機卿たちだった。反物質盗難と枢機卿殺害予告…。事件の解決は、紋章と象徴の研究をしているハーバード大学のロバート・ラングドン教授の頭脳に委ねられた。セルンの科学者ヴィットリア・ヴェトラも、ラングトンの捜査に加わる。彼女は、反物質を封じたカプセル取り扱いを熟知していた。

◆ ◆ ◆

 事件を知らずに、枢機卿たちは伝統どおりシスティーナ礼拝堂に集められていた。手がかりを求め、カルメレンゴに面会したラングドン教授。彼が閲覧を求め、拒否され続けていたガリレオの初版本。その貴重な古書に事件の手がかりが隠されていた。カメルレンゴの許可を得てた二人は、バチカン文書室に入室したのだった。

 犯人はプロのテロリスト。送られた画像には、誘拐された枢機卿を映されていた。1時間ごとの殺人予告。枢機卿の命は、ラングトンの推理にかかっている。背後に伝説の秘密結社イルミナティがいるのか?。4つのエレメントの焼印…。事件はローマを舞台に広がっていくのだった。犯人の目的は何か?。反物質の行方…>>>つづきはDVDでどうぞ!!。

***************************************:

 イアン・マクレガー演じるカルメレンゴが最初から怪しい(笑)。教皇が死ぬと重要書類に押印する指輪を壊す。そのシーンがなかなか象徴的。最初からネタバレ!?状態。有名な“聖マラキの予言”によると、現在の教皇ベネディクト6世の次の教皇で、バチカンの歴史は終わるらしい。ってか、2012年と同じノリの終末論の1つ。

 千年紀の終末、20世紀をもって終わる魚座(キリストの象徴)の時代と、聖マラキの予言はほぼ一致する。教皇もバチカンもカソリックも、まだまだ終わるとは思えないが、女司祭の登場や、新しいキリスト教が生まれる可能性もある。春分点の移った水瓶座の時代、21世紀からの二千年は、変革の時代とされ、霊的進化・科学の時代ともされている。これは本当にそうだと確信する。地球規模の環境変化、太陽活動の不安定、新氷河期の到来!?!?、科学と心の力で乗り越えなければならない課題が、人類には山積みにされている。そのことをつらつら考えると、本作『天使と悪魔』は欧米の不安と本音が潜んだ物語だと思う。

■■■

反物質???

 物質と接し対消滅を起こした時、理論上、莫大なエネルギーに転換する。1gの質量の“反物質”が対消滅する時には、なんと!!約 9×1013(90兆)ジュール のエネルギーが放出されるらしい。ピンとこないが、1ジュールは、地球上でおよそ102グラム(小さなリンゴくらいの重さ)の物体を1メートル持ち上げる時の仕事に相当するそうで、90兆のりんごを1m持ち上げる!?!?、と考えるとなんだか相当に怖いことになる。兆って単位がそもそもピンとこない???。億の万倍?の林檎を90メートル持ち上げる力と=と考えると、そのエネルギーの巨大さが、なんとなくわかった感じもするが、???あはは、、、やっぱり判らないヤ(笑)。実際、2002年にセルン/CERN(欧州原子核研究機構)で日本を含む国際共同研究実験グループが、反水素の大量生成に成功したらしい。ウィッキに5万個とあるが、元素の5万個なんて、どの程度の質量なのか?、あはは、、、やっぱり判らないヤ(アホホホ)。

 物語では容器に閉じ込められた反物質は野球ボールほどもあった。どれほどの破壊力か?。映画の中の爆発程度じゃ済みそうもない…(怖)。巨大なエネルギーを生む研究だが、実用化は本当に先の先、「星間旅行が実現した時、燃料に活用することが出来る」なんてリアルSFの世界。地動説で大騒ぎした中世、反物質で戦々恐々の近未来!?、どっちが怖いか?と言えば、反物質の存在は相当に怖い。

■■■

 映画の感想をまったく書いてない。

 一言で言えば、ハリウッドらしい娯楽作。なんとなく横溝正史、角川映画チックかな(笑)。ラングドン教授はほとんど金田一探偵だ。探すのだが、微妙に手遅れ。目の前でどんどん死んでいく。土に火に風に水、4つのエレメント殺人事件は新鮮味が希薄。世界首都ローマ観光を事件とともに堪能!!。作品に登場する建築は、“サン・ピエトロ大聖堂”・“システィーナ礼拝堂”・“パンテオン”・“サンタ・マリア・デル・ポポロ教会”・“サンタ・マリア・デラ・ヴィットリア教会”・“バルベリーニ広場/トリトーネ”・“ナヴォーナ広場/四大河の噴水” などなど。10年ちょい前、へそくりから豚の貯金箱まで、有り金すべてつぎ込んで、バチカンとローマ観光をした。

死体がごろごろのローマ!、
骸骨山積みのローマ!

 とにかく、官能的!!。それが、遺跡=死の気配と活気が、奇妙なコントラストを醸していた。システィーナ礼拝堂に一般観光客が行く通路傍に、教会関係者だけが利用できるエレベーターがある。一見隠し扉風になっていた。映画のように、バチカンの奥なんて、なかなか見られるもんじゃない。

 ラングトン教授の辿った道を、また観光したくなりました。
 ラスト・シーンはちょっと悲しい…。

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