桜ヶ丘高台











●朝日新聞 8/26日付 be on Saturday
●愛の旅人/東京・多摩

懸命な生への応援歌
月島雫と天沢聖司
近藤喜文監督「耳をすませば」

(本文抜粋)
 駅へと連なるマンション郡や家々を見渡せる丘の上。初めて訪れる場所だが、アニメ映画「耳をすませば」の既視感から、主人公の中学生・月島雫と天沢聖司がいつのでは、という錯覚に陥る。丘はふたりが将来を約束する印象的なシーンの舞台だ。実際に自転車をこぐ若者に遭遇すると聖司か、と目をこらしてしまった。
 東京・新宿駅から西へ延びる京王線の特急列車に24分乗ると聖蹟桜ヶ丘駅(東京都多摩市)に到着する。駅前で、若い女性2人が映画のモデル地を示す看板を写真に収めていた。「耳をすませば」のファンのサイトに『聖蹟桜ヶ丘に行った」という書き込みが、公開から11年たっても見受けられる。
 「中学生のラブストーリーだからと、映画関係者の期待は薄かった」とプロデューサー鈴木敏夫さん(58)は明かす。夏休みの公開が危ぶまれ、交渉を重ねて7月にした。ふたを開けると、95年の邦画収入1位になった。

 この映画が初にして最後の監督作品となった近藤喜文(1950〜98)が四半世紀前、脚本と絵コンテを担当していた宮崎駿さん(65)に「少年と少女のさわやかな出会いの作品を作りたい」と語ったことがきっかけだった。約10年後、宮崎さんが「こういうの好きだろう」と原作を手渡し、映画作りが始まった。(以下、略)

桜ヶ丘















 朝日新聞/be on Saturdayの『愛の旅人』は、毎週土曜のカラー別刷り、文化版の表紙を飾るグラビア連載だ。毎回、映画・事件の、登場人物と舞台などを紹介し、楽しい読み物になっている。8月終わり近く『耳をすませば』が登場。個人的にタイムリーな記事だった。

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 1995年の8月2日、母と一緒に前橋のテアトル西友の小さなスクリーンで見た。最初は、宮崎アニメの誇り高い少女たちと、近藤さんの描いた等身大の中三“月島雫”の違いが印象的だった。そして、作中に登場する歌や地球屋、そこのバイオリン工房、からくり時計、雫の考えた物語etc.、の繊細な美しさと優しさが、日が経つごとに心に染み渡り、『耳をすませば』は私にとって忘れられないものとなった。

 聖司の最後の台詞は、母と一緒に観ていたので、なんだか気恥ずかしく感じたのだが、それも今は懐かしい。大人になるといつの間にか忘れている、思春期の入り口での“恋愛”。しかし、月島雫と天沢聖司には、“恋愛”と言ったありきたりの言葉は似つかわしくない。二つの才能の運命的な出会いを描いた珠玉の作品だ。二人は未来を真直ぐに見ており、その先は不安があっても、輝いている。

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 今夏のジブリの新作『ゲド戦記』を見て、一番に感じたのは、近藤喜文さんが「もし生きていたら…」と言うことだった。(近藤監督は志し半ばに1998年1月21日、解離性動脈瘤により、47歳の若さでご逝去 )それから『耳をすませば」を見直したくて、レンタルDVDを借りに何度か、店のコーナーを覗くのだが、いつもレンタル中。私と同じ想いのファンがいるのか?と嬉しかった。借りることが出来てからは、何度も見直してしまった。

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(本文抜粋)

●ぶらり

 映画のモデル地になったのは、東京都の西にある多摩市の丘陵の住宅地。主人公の月島雫は団地に両親、姉と住む。
 映画では「京玉線杉の宮駅」となっているが、モデルは京王線聖蹟桜ヶ丘駅。駅前に地元の商店会が立てた案内板があり、これを頼りに南側の交差点に出る。雫が猫を追いかけて渡った所だ。交差点を渡り南に通りを進むと、多摩川の支流・大栗川にかかる霞ヶ関橋がある。雫が橋を渡ったり、川沿いの道を図書館の帰りに歩いたりした。(以下、略)

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 記事で、作品の成り立ち、近藤さんの闘病、物語の舞台などが紹介されている。物語の舞台近く多摩市の高台に大学の先生のご自宅があった。1月中旬、締めきりを大巾に遅れた課題を持って、先生の家に行った。映画どおりの京王線にムタのように乗った日のことを思い出してしまった。高台と眼下に広がる市街地と川、地球屋のロータリーからの眺めと先生の家からの返り道の景色がよく似ていた。映画を観た時の、懐かしさは、景色を忠実に描いていることに由縁しているのかもしれない。多摩市近くにお住まいの人は、雫たちの存在を強く感じると思う。

地球屋

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 映画の中で、二つの夢のような場所が描かれる。その一つは図書館の上の高台に建つアンティークショップ『地球屋』。『地球屋』は、“美しいもの”や“音楽”がある高台の家。眼下に広がる絶景、空中に浮いているようなバイオリン工房、西老人の作ってくれる美味しいうどん、誰もが一度は『地球屋』を尋ねたいと願うだろう。しかしロータリーには『地球屋』はない。(三鷹ジブリ美術館に『地球屋』が出来れば最高!)

 もう一つは、雫が、猫のバロンに案内される『イバラード』の世界。『イバラード』は画家井上直久さんの作品だが、『耳をすませば』では雫の描いた世界として登場する。※井上さんはジブリ美術館の壁画制作.なども手掛けられている。(『イバラード』だけでジブリ映画が出来れば最高!)

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 毎日、いろいろなものを観たり、読んだりする。中には、一度観たら、忘れてしまう作品がある。しかし『耳をすませば』は、特別だ。11年の時間の中で、色褪せることがない。誰もが経験する思春期の切なさと痛さ、自分と向き合うことの困難さと大切さ、雫と聖司を通して描かれている。大人になっても、ふと立ち止まって、深呼吸をするような…、そんな作品だ。

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