サイカノ/1


四ヶ月前に映画館で鑑賞(2/23に記事あります。)したのだが、慌ただしい鑑賞で、正直物足りないものがありで、レンタルDVDで再度鑑賞。

●最終兵器彼女●
●原作:高橋しん
●監督: 須賀大観
●出演:前田亜季/窪塚俊介 他
●DVD発売 :2006/06/21

●Amazon.co.jp紹介の内容と批評
小樽に住む高校生のちせ(前田亜季)とシュウジ(窪塚俊介)が付き合い始めてまもなく、突然戦争が始まった。そのとき、ちせは全身兵器の姿でシュウジを守る。彼女は軍によって「最終兵器」として改造され、敵と戦う運命にあった。やがて戦闘が激化していく中、ちせを見守ることしかできないシュウジは…。
高橋しんの同名人気コミックを最新CGを駆使して実写映画化した近未来ファンタジック・ラブストーリー。女子高生が兵器になるという、マンガなら成立しえるウソ話を映像に置き換える作業がうまくいっておらず、ウソがマコトのように思わせてくれないのは正直つらいところ。戦闘シーンなどはかなりのリアリティを出すことに成功しており、ロケの効果も良好、また若い俳優陣の飾らない熱演も好もしいだけに、そうしたスタッフ・キャストの力量に応えきれなかった演出の弱さが悔やまれるところだ。(増當竜也)
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映画を産業として見れば、どんな陳腐なものだろうが、評判になれば「勝ち」であり、またどんな芸術作品でも、収益が悪ければ、(経済面では)評価されない。結局、観客動員数がものを言う世界だと思う。この『最終兵器彼女』は高崎109シネマズでは一ヶ月足らずの上映だった。

現在の日本の映画づくりは、原作の力に負うところが多い。文芸作品(話題作)とのメディアミックスで販売戦略が組まれ、雑誌に連載されたコミックが人気になれば現在上映中の『デスノート』のように映画化される。その後、ゲーム化、実写ドラマ化orアニメ化〜などのように、ニーズのあるところに、展開されていく。

この現象は、映像作家を育てる側面で考えたら、幸せなことなのか?他人の下駄で歩くようなことになってはいないか?そんなことを考えてしまう。黒沢明の絵コンテを例に出すまでもなく、映画監督は、頭の中にあるイメージを広げ、綿密な絵コンテを描く。それが基になり、撮影監督、美術監督などとの共同作業となる。『最終兵器彼女』の場合、原作がコミックであり、すでにアニメ作品も製作されている。大きな塊=コアなファンのいる作品を実写化することは難しい。本作はさて…、どうなのだろうか。。。

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私が最大の違和感を感じたのは、『チセ』と『シュウジ』、主役の二人だ。小さくて、どじで、けなげで、すぐ顔を真っ赤にするちせ、身体がどんどん兵器になってしまうちせ、シュウジに恋するちせ…。主役の前田亜季さんは、頑張って好演していると思う。だが、イメージがまったく違うと思うのは私だけだろうか…。前田亜季さんは生徒会の副会長でも似合う雰囲気、間違っても高橋版のちせは副会長にはならない(汗;。

この映画の一番の欠落は『エロスとタナトス』の気配だったと思う。原作には、濃厚なエロスの香りが漂っている。それは戦争と言う極限状況の中、タナトス=死の対極にあるエロス=生の表現が、物語の大きな柱の1つになっているからだ。幼い恋愛(切なさ、儚さ、愛しさ)の表現が、圧倒的に欠けている。

前田亜季さんは、少しクールで、原作のちせの「えへへ」や、「あは」や、「ぽっ=赤面」と言った、女の子のふにゃふにゃした、柔らかさが足りなかった(ように感じてしまった)。出来たら制服のスカート丈はもっと短い方が良いし、私服もワンピースなど着ないで、もっと違うセレクトがあっただろう。コスプレヤーには絶対○○と呼ばれる絶妙な露出と洋服の着こなしバランスがある。衣装担当の人はわざと昭和40年代のようなちせファッションを考えたのだろうか?メインのタイトル・ビジュアルはなんとなく三浦友和と山口百恵さんの映画のポスターを思い出してしまった。

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シュウジ役の窪塚俊介さんは、しっかりした顎の線、意志的な鼻と目、原作に曖昧な印象ののっぽでどこにでもいそうな高校生シュウジとは、まったく違うタイプだ(のように思う)。原作のシュウジはあまり美男子でないもこみちくんのようであり、ちせは15才の頃のほしのあきさんのようなイメージで、私は原作を読んでいた。この空想=妄想キャスティングは、原作ファンは多かれ少なかれあると思う。監督が意図的に一般ファンの持つイメージを裏切る時は、それなりの演出意図があると思う。本作では何だったのだろうか?どこか文芸作品風に仕立てたかったのだろうか?

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辛口のことを書いているが、前回のレビューで書いた通り、空襲シーンやちせの戦闘モードCGなど、それなりに面白く見ることができる作品だ。終わりも原作とは違う感慨があった。

でも、あの戦争はいったい…なんだったんだろう?

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