昨年の11月のこと。
私は金策に行き詰まっていた。
何もない。廃墟の様相になっている自宅の居間で、障害者の弟の今後を思い悩んでいた。インターネットの検索ワードは『障害者福祉』。さまざまな情報にまじって、上毛新聞の記事アーカイブで見つけたのは『ハートワークス打ち上げコンサート』の文字列。背の高い女性スタッフに混じって小柄な女性が笑っている写真を見た。音楽と通じての地域活動をする任意団体>と、そんな紹介があった。代表女性の連絡先が書いてある。躊躇なくその携帯電話に電話した。
「前橋でカフェをしています。お手伝いをできることがあれば、お手伝いします」
電話口の声は、快活で活気のあるものに感じられた。翌日、その女性は入院中の群馬大学病院から私の店に来た。抗がん剤の副作用の脱毛を隠すためにターバンのようにスカーフを被り、小柄な身体は弾むように動いている。
それが北村陽子にあった最初の日だった。
「入院中の群大から抜け出して来たの。私癌で余命1年と言われているのよ。」
◆◆◆◆
それから260日が経過し、私は陽子さんの遺骨を拾っている。
末期の癌患者とつき合った260日の記録を書いていきたい。
タイトルは
『ひつじ草』
蓮の古名、美しい花の下には強い蓮根を持つ花が、
彼女には一番似合うように思う。
私は金策に行き詰まっていた。
何もない。廃墟の様相になっている自宅の居間で、障害者の弟の今後を思い悩んでいた。インターネットの検索ワードは『障害者福祉』。さまざまな情報にまじって、上毛新聞の記事アーカイブで見つけたのは『ハートワークス打ち上げコンサート』の文字列。背の高い女性スタッフに混じって小柄な女性が笑っている写真を見た。音楽と通じての地域活動をする任意団体>と、そんな紹介があった。代表女性の連絡先が書いてある。躊躇なくその携帯電話に電話した。
「前橋でカフェをしています。お手伝いをできることがあれば、お手伝いします」
電話口の声は、快活で活気のあるものに感じられた。翌日、その女性は入院中の群馬大学病院から私の店に来た。抗がん剤の副作用の脱毛を隠すためにターバンのようにスカーフを被り、小柄な身体は弾むように動いている。
それが北村陽子にあった最初の日だった。
「入院中の群大から抜け出して来たの。私癌で余命1年と言われているのよ。」
◆◆◆◆
それから260日が経過し、私は陽子さんの遺骨を拾っている。
末期の癌患者とつき合った260日の記録を書いていきたい。
タイトルは
『ひつじ草』
蓮の古名、美しい花の下には強い蓮根を持つ花が、
彼女には一番似合うように思う。