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サブ・カルチャー好きの情報スクラップ。ささらほうさらと彼岸を往復。

April 2009

打倒!身分制度なプロパガンダ!?/映画版『ファン・ジニ』4

ファンジニ/映画




























●ファン・ジニ●
●原作;ホン・ソクチュン(朝日新聞出版)
●監督;チャン・ユニョン
●出演;ソン・ヘギョ/ユ・ジテ/リュ・スンリョン/
ユン・ヨジョン/オ・テギョン/チョン・ユミ/チョ・スンヨン 他
●DATA;2007/韓国/141分

 TV版の『ファン・ジニ』はすご〜くハマって見ていた。感想はのちほどアップの予定。今日は映画の方の『ファン・ジニ』の感想をば…。

●あらすじ

 孝行門と呼ばれる両班黄家。名門黄家には一人娘チニがいた。そのチニの傍らには、母に捨てられた孤児ノミが影のように寄り添っていた。まだチニが幼い頃、チニは「提灯祭が見たい」とノミにせがむ。両班の娘は外出は禁じられていたのだ。ノミは、ばあやに内緒でチニと提灯祭に出かける。賑やかな庶民の祭り、夢のように楽しい時間を過ごしたチニ。だが、家にもどったノミは主人の黄に激しく叱責され鞭で打たれる。チニは「ノミは悪くない」と泣いて懇願する。それから間もなくしてノミは黄家を出ていく。

 十数年の時が経ち、黄家の裏山にノミの姿があった。主人の死んだ後、黄家は以前のような賑わいを失っていた。チニは美しく聡明な娘に成長していた。もうすぐ漢城の両班の家に嫁ぐことになっていた。街で黄家の没落を聞いたノミは、黄家に戻り執事として働くことにする。チニのばあや、使用人のイグミはノミの帰還を喜ぶが、チニの心は複雑だった。執事となったノミはまた裏山の高台から黄家を見下ろしていると、「両班の屋敷を何故見ている」と話しかけられる。その女は旅の技生で、かつては黄色の使用人だった。ノミはその女から、恐ろしい秘密を打ち明けられる。それは…。>>>つづきはDVDでどうぞ!!

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ファンジニ/本

 NHKで放映されていた『ファン・ジニ』と同名だが、原作違い(TV版の原作はキム・タクファン)の映画化。以前も書いたが、『ファン・ジニ』は、16世紀に実在した伝説的な名妓を題材とした物語。ウィキペディアに【朝鮮の詩人 黄真伊=明月;生没年は約1506年 - 1544年頃】とあるので、中宗時代に38歳で死んだことになる。

 断片的な詩=時調とコムンゴ(琴)の編曲楽譜が残っているだけ、その残っている詩の素晴らしさや、編曲の巧さから、彼女が卓越した才能の持ち主だったと推測されているそうだ。残った詩の断片は失った恋人を歌ったもので、なんとも小説家や芸術家のインスピレーションを刺激する存在!だ。

 TV版と映画版、二人の作家は同じ人物を描きながら、まったく違う視点で彼女を分析している。TV版は、チニとウノの悲恋、チニと松都ペンム行首との確執、プヨンとの芸競い、キム・ジョンハンとの別れなどなど、沢山のエピソードがチニの生涯を彩るが、チニはしっかり青春しつつ成長している。だが、映画版はいささか趣きが違う。映画版は、身分制度の中で、世を恨む孤高な娘が本当の愛を知り、そして愛を失う物語だ。

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 TV版では明月の護衛を務めていた無名=ムミョン。映画版ではノミ=無知として登場する。チニを愛している余りに、チニを不幸のどん底に落とす男!!。彼が犯した罪の償いは余りに悲しい。愛するがゆえに犯す罪…、そのノミを愛するチニは、身分制度そのものに対し、反骨を貫く。TV版にしろ、映画版にしろ『ファン・ジニ』は、身分制度に馴染まない今の日本人には、なんとも納得いかない不条理が多い。両班のお嬢さんだったチニが、なんで家を出て選ぶ職業が妓生なのか?。それしか生きる道はないのか?。????だったりする。加えて、TV版・映画版とも共通しているのだが、チニの両班に対する恨みは本当に根強く、強烈!だ。

 その物語を鑑賞するための蛇足になるが、長く同一王朝が続いたため、朝鮮半島には厳格な身分制度が産まれた。良民(両班>中民>常民)と賤民(奴婢>白丁)と区別され、技生は下層階級の奴婢に分類されていた。良民と奴婢の間では正式な婚姻など成立せず、もし賤民階級の男が良民の娘と恋仲になれば、死罪にもなる大罪となる。


 その中で、妓生は低い身分でありながら、王族や両班の相手を務める特殊な存在。特に官に属する一牌妓生は、高い教養と技芸を求められ、豪奢な衣装の着用も許される特権階級。没落した両班の娘なども多かったそうで、気位も高いのは当たり前!!。元お嬢様が売春しなくちゃならない!?!?!?、ハチャメチャ!!に矛盾した存在なのだ。この前提で『ファン・ジニ』を観ると、彼女の意地悪ブリ(笑)が、少しは納得いく。

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 TV版は赤やピンクを多様し、豪華な衣装や丁度が評判だった。だが、映画版は陰影の多い画面づくりで、全体に押さえた色調になっている。映画のチニは化粧も地味で、緑や黒を基調とした衣装を着ていた。華やかな踊りのシーンもなかった。

 画面に漂う死の影…、顔も知らずに死んだ母、チニに恋いこがれて死んだ若者。二つの葬列が物語の重要なシーンになっている。どんなに評判の名技になっても、彼女の顔は暗く、物思いに沈んでいる。チニの心は半分死んでいる。存在そのものが不幸だと自ら烙印を押した人生はどれほど辛いものだろうか…。身分制度の愚かさをしみじみと感じる。

 ラストシーンは北朝鮮でロケしたそうだ。雄大な山河が美しく、なんとも儚く美しいシーンだった。

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ア〜!ミエチャッタ!神様ってこんな!!/『もしもし、神様』4

もしもし、神様






●もしもし、神様●
“正しい神社”で幸せ力を高める
●著者;大川知乃
●出版社;マガジンハウス
●発売日: 2008/12/5


 マガジンハウス系の雑誌に、本書の広告が載っていた。表紙のイラストが江口寿史のイラストに似ていた。サイボーグ009みたいなスカーフが可愛い。ナント!!表紙のヒトはアマテラスさまとのこと。神様の笑顔が可愛いので衝動買い!?。


●内容紹介(amazonから転載)

神々と日々語り合いながら、人間と神の絆を取り戻すべく心を注ぐ著者が、神様を味方にするための心得とマナーをお伝えします。現在つらい方、絶望感や無力感に打ちひしがれている方、そんな方々は神様との距離を縮めるという点ではとても有利なポジションにいます。その感受性に自信を持ってください。この本では、神様と24時間常時接続できるようになった著者の生い立ちから、ぜひ参拝して欲しい神社、そこで出会った神様の紹介、荒廃して魔物が支配する神社(現在、驚くほど多いのです!)を立て直す壮絶な戦い、神様を感じるために自分を清めていく方法、などについて綴っています。もしもし、神様、と語り続けることが大切です。通話料は不要です。

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 マガジンハウスは、お洒落なイメージの出版社。だが、その実体(?)は、マンネリしても『ムー』を廃刊にしない学研(笑)と同じ穴のムジナ!?。けっこうなオカルト好き出版社なのだ。大会社の影に、霊能者の御託宣あり!!。本書の著者大川知乃さんの肩書きはスピリチュアルカウンセラーとのこと。マガジンハウスは江原啓之さんの本を沢山発行している。大川さんは第二の江原さんになるか?。霊能者の世界に新しいスターの登場になるのか?。興味津々と頁をめくる。

 初読での感想は、加門七海さんと同じタイプの霊統=感受性の人だった。神社で見える神様や魔物(※私はこの表現は好きではないが…)、大蛇などなど、加門七海さんの神社エッセーとほとんど同じノリ。どっちかと言うと先発隊の七海さんはニギニギしいお祭気分で探訪しているが、本書の大川さんは生真面目に作法や行法にこだわっている。どっちが善いとも悪いともなく、どっちも楽しいと感じる私は若干無責任なのかもしれない。

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 過去の経験から、七海さんの話も大川さんの幼少時の体験なども、微妙に理解できる。大川さんの見えるものも、なんとなく判るような気がする。ただ、大人になってから、それらを脳内の出来事と解釈している。他者と共有できた幻想体験以外は、一応妄想の範疇。実際に目に見える大自然や、草花、鳥、魚、獣、命ある森羅万象は、存在自体不思議に満ちている。実存する命は、他者と感動と感謝を共有できる共通の宝だ。なんたって神様は森羅万象の中に偏在しているわけだから、ついつい自然や綺麗なものを偏愛してしまう。

 本書のセールス・ポイントは著者大川さんが感じる神様の擬人化イラストだ。

 見える人系には、このイメージはそれぞれ違うイメージだと思う。漫画家の美内すずえ先生や、山本鈴美香先生も神様の見える人だ。絵で見る限り、皆さん!!超美形!!。私的には、アマテラスさんは両性具有で、美貌の男性のようなイメージを持っているし(スサノオさん的かな)、ツクヨミさんは、兎や蛙と遊ぶ妖精神のようなイメージが強い。これらは、神話や説話の影響を受けてのことで、どれも本体のイメージはまぶしくて暖かい光でしかないのだろう。

 そこらへんをわきまえて、一種のファンタジー(江原さんがよく言う科白)として読むと、荒唐無稽破天荒な内的アドベンチャーだったりする。誰か腕の良いライターを探して、大川さんの体験をノベライズしても面白いと思う。「面白い」を通じて、日本霊統を守護する神霊集団との正しいおつき合い方法を学ぶのも面白い。

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 神社好きで、スピリチュアルが好きな人にはお薦め!!。加門七海さんと是非対談して欲しいゾ!!。

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謎!?“ローラ・チャン=空美”/テレプシコーラ舞姫 第2部2巻5

テレプシコーラ2/2





●テレプシコーラ舞姫 第2部2巻●
●著者;山岸涼子
●出版社;メディアファクトリー
●発売日: 2009/3/23













 高崎市に新しく出来たカルチャー・スクールには、バレエの教室が複数ある。都内から先生が来ており、本格的な雰囲気が漂っている。レッスン室は建物の通路に面しており、ブラインドの隙間から生徒さんが見える。ナァ〜ンと!!、成人クラスは綺麗なお姉さんばかり。子供クラスは、練習を見守る父兄!が熱い。&チビッコたちのお揃いのピンクのレオタードが可愛い。チラッと横目で見ながら、『テレプシコーラ』の世界だな〜、と思ったりする。

●第2部のおさらい

 六花は16歳、志し半ばで死んだ姉の夢を受け継いでいた。

 六花は、すでにバレエコンクールで奨学生の権利を得ていた。それに加え、難関のローザンヌ国際バレエコンクールのビデオ審査も通過。もしローザンヌに出場すれば、すでに得た奨学生権利を放棄することになる。辞退を勧める周囲の思惑とは別に、六花はローザンヌを目指す。

 雪による航空機の出発遅延、茜たちの荷物の未着など、ローザンヌは到着前から前途多難…。中でも、同行の茜は出発時から風邪にかかっていた。茜たちと別便になり、1人スイスに到着した六花、寒さと時差に体調は万全ではなかった。いよいよ、ローザンヌ国際バレエコンクールが開始される。日本のステージと違い、大きく客席方向に傾斜した舞台。言葉の壁、始めてのことばかりに戸惑う六花…。気持ちが萎えた時、彼女を励ますのは心の中の千花の声だった。

 本選を前に、クラシックやモダン、振り付けなど、さまざまなレクチャーが六花らに用意されていた。世界各国から集まった才能豊かな出場者たち。なかでも中国系アメリカ人のローラ・チャンは、クールな美貌に加え、ひときわ光ったダンサーだった。股関節の欠点もあり、テクニックに劣等感を感じることも多い六花は、ローラの踊りに羨望とともに、一種の既視感を感じる。六花とローラ、茜、多くの才能がぶつかっていく。

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 おなじみ本の月刊誌『ダ・ヴィンチ』に連載中の『テレプシコーラ舞姫』。衝撃(!)の第1部から、物語は新展開の第2部へ。コミック単行本は、本巻で通巻12巻目になる。

 第1部では、都内近郊のバレエ教室が舞台。姉妹の成長とともに、進学問題やイジメ、バレエのこと以外にさまざまな事件が描かれた。だが、第2部はいささか違った雰囲気で進んでいる。平たく書くと「六花ちゃんと学ぶローザンヌ国際バレエコンクール」って感じになる。

 今回の第2部を描くに当り、山岸先生は現地で綿密に取材。コマの書き込み補足によると、多くの関係者から取材をしている。だから、ローザンヌ国際バレエコンクールの細部は勿論のこと、市内にある美味しいチョコレート屋さんのこと、参加者で出されるランチの具体的な内容、風邪をひいた時に飲むプロポリスのことなどなど、コミック・エッセー風なトピックも多い。一見、お役立ち情報風なのだが、誰の役立つかは、微妙にバレエ愛好者&関係者だけ(笑)。本当に、一部限定な情報で可笑しい。

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 第2部で気になるのは“ローラ・チャン”の存在。

 私は彼女の登場シーンから、勝手に“空美ちゃん”だと思っている。空美ちゃんは、第1部中盤で突然姿を消したきり、まったくストーリーに絡んでこなかった。かつてのスター・ダンサーであり、心身を病んだ叔母から、空美は英才教育を受けた少女。家庭の複雑な状況、貧困の極地にあって、考えられないような仕事もさせられていた。

 物語の初期から登場していたのに、存在を忘れたかのように数年経過。それに「いくらなんでも…」的な雑な顔だち(茜ちゃんもそうだけど=汗)の描写。それが凄みのある美貌に成長していた。あの雑な三白眼&ベース顔も、すべて第2部の伏線だったのか?!。本当に山岸先生は怖い(笑)。

 ファンは、山岸作品を読むこと自体楽しみ。『テレプシコーラ』依存症!?なっている。こういうノリってやっぱり大御所の風格なんだな〜!!!、とつくづく思う。同じ大御所の美内先生の『ガラスの仮面』で『紅天女』の審査が何十年続いていてもファンは怒らないのと同じだ(汗&爆)。

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 千花、六花姉妹は勿論、ひとみちゃんや茜ちゃん、バレエ学校の先生たちも含め、本作『テレプシコーラ舞姫』が多くの才能を描く群像劇だ。狂言回し役の六花ちゃんは傍観者であり、作者の分身のような存在。振り付けの才能が今は強調されているが、これも先生独特の伏線の反転?。彼女の表現力の才能は未知数であり、第2部の楽しみになっている。

 5月号では、六花ちゃんの風邪状態が気になりつつ“次号につづく”。世の中がどんなに不況でも、物語はバレエの時間だけを刻んで行く。これって六花ちゃんのパパが地方公務員ってこともあるのかな〜、、、と思う私だった。

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